通信制高校ってどんな学校なの?自分の目的に合ったペースで学べる方法 更新時間 2022.11.11
高校へ進学するにあたり、通信制高校に興味がある方も多いのではないでしょうか?
また高校を中退してしまった方や、今の学校が合わないと悩んでいる方も、通信制高校がどんな学校か知りたいですよね。
「通信制高校って普通の高校とどう違うの?」
「通学しなくてもいいって本当?」
今回は、通信制高校の仕組みや全日制・定時制高校との違い、通信制高校の学習方法について解説していきたいと思います。
また通信制高校へ通うメリットやデメリットも紹介していますので、通信制高校への入学や編入を検討されている方は参考にしてみてください。
通信制高校の仕組みを知ろう!
通信制高校とは、その名の通り「通信教育で学ぶ高校」を指します。
何らかの事情で毎日登校できない人に教育を受けさせる目的で、1948年に文部科学省が創立しました。
それからおよそ75年、通信制高校は数多くの生徒の学習をサポートし、通学できない生徒に教育機会を与えてきた経緯があります。
そんな通信制高校ですが、全日制・定時制高校にはない自由さと、幅広い選択ができることに注目が集まっています。
通信制高校についてよく知らない方も、本記事を読んで学校の仕組みについて理解を深めましょう。
通信制高校の通学スタイルは?登校日ってあるの?
通信制高校では通信教育が基本と述べた通り、全日制高校のように毎日通学する必要はありません。
しかし卒業するためには、学校ごとに決められた登校回数だけ通学する必要があります。
通信制高校では通学することを「スクーリング」と呼び、自宅での自主学習で分からないところや試験に出るポイントなどを直接指導してもらえます。
スクーリング回数は「公立」と「私立」で大きく異なり、公立であれば月に2回、私立の場合は週5日〜年数回のみと幅広い通学スタイルに対応しているのが特徴です。
通信制高校を卒業する条件
通信制高校でも卒業要件を満たせば、全日制や定時制高校と同じように「高卒」の資格を取得できます。
通信制高校を卒業するための条件は、以下の3つです。
- 3年間で74単位以上を習得する
- 30単位時間以上の特別活動
- 3年以上の在籍
①の単位を習得するためには、年に1〜2回実施されている「単位認定試験」に合格する必要があります。
その試験を受けるための資格が、自宅で行う「レポート提出」と、対面で授業を受ける「スクーリング」です。
②の「特別活動」とは、ホームルーム活動や学校行事、生徒会活動などへの参加を指します。
また卒業するには最低でも3年はかかりますが、働きながら10年くらいかけて高校を卒業する人もいるようです。
通信制高校・全日制・定時制の違い
通信制高校の仕組みが分かったところで、全日制や定時制高校との違いを解説したいと思います。
では、以下の5項目について徹底比較していきましょう。
- 入試試験
- 入学時期
- 通学スタイル
- 授業時間
- 単位制と学年制
入試試験
- 通信制高校 ・・・ 書類選考や面接
- 全日制高校 ・・・ 公立高校5科目、私立高校3科目
- 定時制高校 ・・・ 国語・英語・数学・面接
通信制高校には学力試験はほとんどありません。
面接や作文、書類選考のみで合否を決めるパターンが多いです。
学力試験を設けている高校もありますが、国語・数学・英語の3科目を60分間で解くというものだったりして、学力をそれほど重視していないことが分かります。
ただし大学進学コースへ進む場合は、ほとんどの高校で学力試験を設けていて、学力レベルの把握に役立てています。
入学時期
- 通信制高校 ・・・ 4月と10月、もしくは随時可能
- 全日制高校 ・・・ 4月のみ
- 定時制高校 ・・・ 4月のみ
小学校や中学校と同じように、全日制や定時制高校は4月の入学が一般的です。
一方で、通信制高校は4月と10月の年2回を入学時期としているケースが多く、学校によっては通年を通して入学を許可しているところもあります。
編入学も入学と同じような受け入れ体制をとっており、転入学は随時受け付けている学校が多くなります。
通学スタイル
- 通信制高校 ・・・ 週1〜5日の選択制、もしくは年に数回程度
- 全日制高校 ・・・ 週5日
- 定時制高校 ・・・ 週5日
通信制高校の大きな特徴が、この通学スタイルです。
毎日通学する必要がないため、不登校で学校に通えない生徒や、病気などを抱えている人でも卒業できるようになっています。
実は公立通信制高校では、月に2回の日曜日に学校へ行くスタイルが主流でした。
しかし月に2回しかスクーリングがないと、学習サポートが不十分だったり生徒と先生との距離が遠かったりといった問題が生じます。
それに対し、私立通信制高校が「週に1〜3回、もしくは週5回のスクーリングも受け入れよう」という考えで、通学型の通信制高校が増えはじめました。
通学スタイルは全日制や定時制と変わらず、しかし自由度は高いといった、柔軟な通学スタイルが人気を集める理由の1つと考えられるでしょう。
授業時間
- 通信制高校 ・・・ 1コマ50分程度で半日のみ(学校により異なる)
- 全日制高校 ・・・ 9時〜16時頃まで
- 定時制高校 ・・・ 夕方〜1日4時間ほど(午前・午後の学校もある)
通信制高校は自主学習になるため、自分の都合に合わせた学習スケジュールを組むことができます。
またスクーリングの際は半日のみの授業が基本で、選択コースによっては1日かけて授業を行う学校もあります。
全日制は1日6時間ほど、定時制高校は1日4時間ほどの授業時間です。
通信制高校や定時制高校には、働きながら学校に通っている人も少なくありません。
自分の都合で勉強に取り組むことで、高校卒業の資格を取得することができるのです。
単位制と学年制
- 通信制高校 ・・・ 単位制
- 全日制高校 ・・・ 学年制(まれに単位制)
- 定時制高校 ・・・ 学年制or単位制
- 公立と比べ卒業のためのサポートが充実している
- さまざまな学習コースが用意されている
- 施設や設備環境が整っている
- ITを活用した授業やサポート体制
- 個別授業や少人数制の学習スタイルもある
- スクーリングや転入時期に柔軟に対応できる
- スクールカウンセラーなどの専門家が在籍している
まず、単位制と学年制の違いについて解説したいと思います。
高校卒業の資格を得るには、必要な単位を取得しなくてはなりません。
その単位を取る方法が、「単位制」と「学年制」の2種類に分けられます。
「学年制」を採用している全日制高校では、年間35単位時間(1単位50分程度)の授業を受け、試験によって定められた点数以上を取ることで単位習得とみなされます。
しかし不登校や病気・ケガなどで学校に行けないと、出席日数が足りずに留年してしまうケースもめずらしくありません。
一方で、通信制高校では「単位制」が採用されており、年間の取得単位を生徒自身で決めることができます。
つまり通信制高校には「留年」という概念がなく、自分の好きなペースで学習を進めることが可能という訳です。
通信制高校に通っているのはどんな人?
通信制高校では「自主学習」という特性上、実にさまざまな生徒が在籍しているのが特徴です。
とくに仕事をしている人や、病気や不登校などが原因で全日制高校に通えなくなった生徒のニーズが高くなります。
また高校を中退した人、発達障害などの生徒も通信制高校を選択する割合が高いです。
しかし近年では、アスリートが通信制高校を利用しはじめたり、国家資格を目指して通信制高校を選んだりする生徒が増えています。
例えばプロサッカーとして活躍する香川真司選手、フィギュアスケートの紀平梨花選手、日本女子ゴルフ界で活躍する畑岡奈紗選手なども通信制高校の卒業生です。
このように、「10代のうちに成果を出したい」「学業以外の活動に集中したい」という理由で通信制高校を選ぶ人が年々増えており、アイドルや芸能活動をしている人、起業家などの学生も増え注目を集めています。
授業料やそれ以外の学費について
通信制高校の学費についても、どのくらいかかるか気になると思います。
通信制高校も全日制と同様、公立が安く私立が高い学費の設定がされています。
以下は、公立と私立の通信制高校の学費平均を比較したものです。
必要な費用 | 公立 | 私立 |
---|---|---|
入学金 | 500円 | 1〜5万円 |
授業料 | 1~3万円程度(年間) | 20万円~(年間) |
授業料以外の費用 | 1.5万円程度(年間) | ネットコース3万円〜(年間) |
合計 | 2〜6万円程度 | 24万円〜 |
(※金額は当社で調べた目安になり、学校やコース、都道府県によって異なります)
公立と私立では「年間20万円以上」も学費に差が生じますが、それは以下のような理由があるからです。
一方で、公立は細かいサポートが十分ではなく、不登校や精神疾患がある生徒は3年間で卒業できないケースもめずらしくありません。
高卒資格を最短で取得したいなら、私立の通信制高校を選ぶことをおすすめします。
また、通信制高校の学費について、「通信制高校の学費は安い? 学費が安くなる通信制高校の選び方」でまとめているので、是非ご覧ください。
【目的別】通信制高校でマイペースに学習する方法
通信制高校にはさまざまな目的を持った生徒が集まっているため、学習スタイルも色んなパターンが設けられています。
本章では、目的別に学習する方法について、さらに詳しく解説していきたいと思います。
目的に沿った学習方法を理解することで、通信制高校に通っている自分の姿がイメージしやすくなるでしょう。
大学進学コース
通信制高校の大学進学コースでは、以下のようなサポートが設けられている学校があります。
- 授業の理解度に合わせたマンツーマン指導
- 予備校講師を招いた特別講習
- 進路相談や願書作成のサポート
- 専門家によるメンタルケア
通信制高校の中でも進学クラスが充実している学校では、受験のプロから直接指導が受けられたり、少人数制や個別指導が受けられたりといったサポートが満載です。
また中学校の基礎を学び直しながら、難関大学を目指すコースなどもあり、個人の能力に合わせた学習ができます。
さらに英語に力を入れている学校では、ネイティブ教員による指導が受けられるなど、学校ごとに力を入れているポイントが異なります。
資格を取得して就職コース
通信制高校の中には、美容師やネイリスト、調理師、介護士、プログラミングなどの資格が取得できる学校も多いです。
インターンシップ制度を取り入れている学校もあり、ビジネスマナーや社会人としての基礎的スキルを学生のうちに身に付けられます。
大学進学に特化した学校があるように、就職に強い通信制高校もたくさん存在します。
「社会人養成コース」や「専門コース」が設けられている、就職に特化した学校を選ぶことで、将来の選択肢を広げてくれるでしょう。
また学校によっては特定の業界や企業にパイプを持っているケースもあるので、学校の就職実績を調べてみるのもおすすめです。
学校からの推薦や過去の就職実績があれば、企業側からの信頼も高くなり就職もしやすくなるでしょう。
出来るだけスクーリングせずに卒業する方法
スクーリング回数を最小限に抑えたい場合は、私立の通信制高校を選ぶといいでしょう。
公立は月に2回のスクーリングが定められていますが、私立は年に3〜5回のスクーリングで卒業できる学校もあります。
自宅でのオンライン学習を中心に進められ、ほかの生徒とほとんど顔を合わせることなく、自分のペースで高校生活が送れるでしょう。
学校によっては「保護者同伴のスクーリング」が可能なところもありますので、卒業サポートが手厚い学校を選ぶことが大切です。
働きながら高卒資格の取得を目指す方法
高校を中退したまま社会に出たのは良いものの、「中卒」という学歴がネックになってしまった方も多いでしょう。
「とにかく高卒の資格が取りたい」「働きながら卒業したい」と考えている方は、仕事と両立しながら卒業できる高校を選ぶことが重要です。
出来るだけ少ないスクーリング回数で卒業できる学校や、オンライン授業の体制が整った学校が続けやすいでしょう。
また勤務先の理解を得るためにも、事前に通信制高校に通うことを伝えておくと、急な出勤や残業をお願いされることも少なくなります。
どの学校もレポートの提出期限があるので、「3年間で卒業する!」と限定せずに、「5年かけて卒業しよう」など、ゆとりを持って学ぶといいでしょう。
通信制高校を選ぶメリット・デメリット
通信制高校の仕組みや学習方法が分かったところで、通信制高校に進むメリットとデメリットをご紹介したいと思います。
両方を知ることで、自分にベストな進路が選択できるようになるでしょう。
通信制高校へ進学する6つメリット
通信制高校へ進学するメリットは、以下の6つです。
- 自分のペースで学習が進められる
- 不登校や病気に悩む生徒に対するサポートが手厚い
- 学費が安く働きながら通える環境
- 人間関係に悩むことが少ない
- 何歳になってもチャレンジできる
- 学びながら国家資格が取得できる
通信制高校は自由度の高い学校生活が送れることが、大きな魅力と考えられます。
学習に専念したい、高卒の資格を取りたい、国家資格を取得して就職したいなど、一人ひとりの要望に対応できる環境が整っています。
また年齢制限もないので、30代40代からでも勉強をやり直すことが可能です。
「将来やりたいことがない」という人でも、通信制高校に通って色んな授業を受けることで、夢や目標を見つけられるかもしれません。
授業料も安く、世帯年収によっては就学支援金で授業料を実質無料にすることもできます。
通信制高校を選ぶ4つのデメリット
通信制高校へ進学するデメリットは、以下の4つです。
- 学習への意欲や自己管理が必要
- 高校生らしい学校生活が味わえない
- 先生や友人との関わりが少ない
- サポートが手厚いほど学費が高くなる
通信制高校の基本は自主学習なので、スケジュールを管理して計画的に学習しなくてはいけません。
自分を管理できないと学習が進まずと、何年経っても卒業できないままで、結果的に卒業を断念してしまう人もたくさんいます。
また通信制高校は学校に通わなくていいことが魅力でもありますが、高校生活を満喫したい人にとっては物足りなさを感じてしまうでしょう。
「学校の色んなイベントに参加したい」「友人をたくさん作りたい」という方は、週3〜5日コースがある私立の通信制高校へ進学することをおすすめします。
また、通信制高校のメリット・デメリットについて、「通信制高校のメリットとデメリットを徹底比較!新型コロナでも通信制高校なら大丈夫!」でまとめているので、是非ごらんください!
通信制高校で自分の目的に合った学習スタイルを叶えよう!
通信制高校の仕組みや、全日制・定時制高校との違いをご紹介しました。
またメリット・デメリットの双方を知ることで、自分に合った高校の種類が理解できたと思います。
少子化が進み生徒数が減少するなか、通信制高校の生徒数は右肩上がりです。
とくに私立通信制高校は学校の数も大幅に増え、多くの学生のニーズを満たせる特性やサポート体制を整えています。
体調や学習理解度、仕事との両立などをしっかり考え、できるだけ短期間で卒業資格が取得できるよう通信制高校を選びましょう。
また、通信制高校にいくための対策や受験内容について、「通信制高校に行くためには?受験内容とおすすめ対策をご紹介!」でまとめているので、是非ご覧ください!