通信制高校の私立と公立の違いとは?学費・授業内容・サポート体制を徹底比較 更新時間 2025.01.23
全日制高校と同じように、通信制高校にも「公立」と「私立」があります。
どちらも高卒資格を取得する条件に違いはありませんが、学費や学習スタイル、サポート体制、設備などはまったく異なります。
進学や編入にあたって、公立と私立にどのような違いがあるかを理解おくことは重要です。
本記事では、公立と私立の違いを徹底比較しながら、それぞれのメリット・デメリットをご紹介していきたいと思います。
学校選びに悩んでいる方、通信制高校の仕組みについて知りたい方はチェックしてください。
なお、通信制高校とはどのような学校なのかについて知りたい人は以下の記事をご覧ください。
【概要】公立の通信制高校とは?

通信制高校は、全日制や定時制とは異なる学び方を提供する高校の一形態であり、多様な背景や事情を持つ生徒が通っています。
特に公立の通信制高校は、地方自治体(都道府県)が運営し、学費が安価であることから、多くの生徒にとってアクセスしやすい教育の場となっています。
ここでは、公立通信制高校の基本的な仕組みや特徴について詳しく解説します。
都道府県の各地方自治体が運営している学校
公立の通信制高校は、地方自治体(都道府県)が運営している学校で、全国に79校が開校されています(※令和6年時点)。
この制度は、経済的負担を軽減し、幅広い生徒に教育の機会を提供することを目的としています。
例えば、北海道のような広大な地域では、通信制高校へのアクセスが難しい場合があり、その場合には「協力校」と呼ばれる施設が設置されることがあります。
協力校では、スクーリングや試験を行い、地域住民の利便性を高めています。
このように、公立通信制高校は地域に根差した運営が特徴であり、自治体ごとの教育方針や財政状況に基づいて運営されています。
原則その地域に住んでいる生徒が通う
公立の通信制高校は、原則として住んでいる地域、つまりその自治体が運営する学校に通うことが求められます。
これにより、地元の生徒に教育機会を提供する仕組みとなっています。
通信制高校には「広域性通信制高校(広域校)」と「狭域性通信制高校(狭域校)」があり、公立の通信制高校はほとんどが狭域校です。
狭域校の場合、通学可能な地域は学校所在地とその隣接地域に限られるため、選択肢が限られるケースがあります。
ただし、近隣に学校がない場合や特定の理由がある場合は、自治体の判断で例外が認められる場合もあります。
全日制・定時制同様のカリキュラムで授業が進行
公立の通信制高校では、全日制や定時制高校と同様に国が定めたカリキュラムに基づいて授業が進められます。
基礎科目を中心に、高校卒業資格を得るために必要な単位を取得することが主な目的となります。
通信制ならではの特徴として、生徒は自宅学習とスクーリングを組み合わせて学習を進めます。
スクーリングでは、学校に通い教師から直接指導を受けたり、実験や実技といった特別な授業を受けたりします。
これにより、自己学習だけでなく実際の体験を通して理解を深められます。
また、生徒一人ひとりが自分のペースで学びを進められる点も、公立通信制高校の大きな特徴です。
【概要】私立の通信制高校とは?

私立の通信制高校は、民間の学校法人や企業が運営する教育機関であり、全国に数多く存在します。
令和6年時点で224校が開校しており、その多くが広域性通信制高校に該当します。そのため、地域を問わず全国各地からの生徒が入学可能で、学ぶ場所や方法について幅広い選択肢が用意されている点が特徴です。
ここでは、私立の通信制高校の基本的な仕組みや特徴について詳しく解説します。
民間の学校法人が運営している学校
私立の通信制高校は、公立と異なり、地方自治体ではなく民間の学校法人や企業が運営しています。
こうした学校は独自の教育理念や特色ある方針を持ち、生徒の多様なニーズに対応しています。
一般的に学費は公立よりも高い傾向にありますが、その分サポートが充実しており、進路指導や心理面でのケアを行うスクールカウンセラーが常駐している学校も少なくありません。
在住地域問わず多方面から生徒が通っている
私立の通信制高校は広域性を持つ場合が多く、住んでいる地域にかかわらず、国内のどこからでも入学、編入、転入ができます。
例えば、オンライン授業や各地に設置された学習センターを活用することで、遠方からでも学習を継続できる仕組みが整っています。
また転勤や引越しが多い家庭の生徒や、特定の地域に通学が困難な生徒にとって、大きなメリットと言えるでしょう。
専門分野に特化したコースを多数設置
私立の通信制高校では、美容や芸術、スポーツ、IT、語学など、専門分野に特化したコースを提供している学校が多いのが特徴です。
このような多彩なカリキュラムにより、生徒は自分の興味や将来の目標に合わせた学びを選択できます。
また、企業や大学との連携プログラムを用意している学校もあり、高校在学中から専門スキルを身につけたり、大学進学への準備を進められます。
こうした点で、私立の通信制高校は特にキャリア志向や夢を追求する生徒に適した環境を提供しています。
通信制高校の公立と私立の違い

通信制高校は、全日制高校とは異なる柔軟な学び方を提供しており、全日制に通えない事情を抱えた人や働きながら学ぶ人にとって重要な選択肢です。
ただし、通信制高校にも公立と私立があり、両者には特徴や学費、サポート内容に違いがあります。
この違いを理解して、自分に合った学校を選ぶことが大切です。
比較項目 | 公立の通信制高校 | 私立の通信制高校 |
---|---|---|
学費 | 比較的安価 3年間で約90,500円 |
高額 3年間で約109~125万円 |
スクーリング回数 | 学校指定 週に1回、決まった曜日 |
生徒自身で自由に設定可能 週1日〜5日の間で、日数や曜日を選べる |
授業内容 | 全日制や定時制高校同様の学習カリキュラム 専門分野について学ぶ機会が少ない |
全日制や定時制高校同様の学習カリキュラム 専門分野について学ぶ機会が多い |
不登校児童に対するサポート体制 | ・法律により、教職員の数が決められている ・学校独自のサポートが少ない |
・独自の学習サポートを設置 ・個別カウンセラーか常駐 |
入学・編入・転入時期 | 年1回(4月)のみの実施 | 随時実施 ※時期は学校によって異なる |
入学可能な地域 | ・原則、住んでいる自治体の学校へ通う ・学校が遠い場合は、近くの協力校を利用できる |
日本全国どこからでも通学可能 ※学校によって通学ルールが異なる |
無論、学費やサポート内容などの面から通信制高校の公立と私立には通学するメリット・デメリットがあるため、自分の進路や生活スタイルを踏まえて、最適な選択をすることが重要です。
ここからは、上記表に加えて、以下の項目を基に両者の違いを解説します。
- 学費
- スクーリング回数
- 授業内容
- 卒業率
- 通信制高校の公立・私立の生徒数
- メンタルサポート
- 入学・編入・転入時期
- 入学可能な地域
- 通信制高校の数
学費の違い
公立と私立の通信制高校では、学費が大きく異なります。
以下は、当社が調べた公立と私立の学費平均の内訳をまとめたものです。
(※学校やコース、都道府県によって差額が生じます)必要な費用 | 公立 | 私立 |
---|---|---|
入学金 | 500円 | 1~5万円 |
授業料 | 1~3万円程度(年間) | 20万円~(年間) |
※1単位300円~1,000円 | ※1単位6,000円~ | |
授業料以外の費用 | 1.5万円程度(年間) | ネットコース3万円〜(年間) |
登校コース10万円〜(年間) | ||
合計 | 2~6万円程度 | 24万円~ |
なお、通信制高校の学費についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
通信制高校の学費はどれぐらい?平均費用や無償化・免除方法などを解説
スクーリング回数
通信制高校とは、その名の通り「通信教育で学ぶ高校」を指します。
何らかの事情で毎日登校できない人に対し、教育を受けさせる目的で設立されたのが、通信制高校の始まりです。
しかし通信教育でも、登校が一切不要ということではありません。
公立通信制高校の場合は、毎月2回程度のスクーリングが義務付けられています。
さらにスクーリング日と期末試験の日程が学校によって決まっており、きちんと守らないと単位を習得できません。
病気やケガ、不登校などの問題を抱えている人にとっては、決まった日にスクーリングすることがむずかしいケースもあるでしょう。
私立の通信制高校では、月に1回、もしくは年に3〜5回のスクーリングで卒業できる学校も多く、自分の都合に合わせて計画を立てることが可能です。
また「通信制高校だけど毎日登校したい」という生徒に対しては、週5日のスクーリングを設けている学校もあり、要望に対して柔軟に対応できる体制を整えています。
通信制高校のスクーリングについて詳しく知りたい方は是非 「卒業するためには絶対必要?通信制高校のスクーリングとは!」を参考にしてみてください!
授業内容
公立通信制高校の授業は、全日制高校と同じような基本的な学習内容です。
通信制高校を卒業するには、「必履修科目を含む74単位以上の単位取得」をクリアする必要があります。
必履修科目とは国語や地理、数学、理科などで、全日制や定時制高校も同じように定められており、もちろん公立も私立も変わりません。
そして74単位から必履修科目を引いた残りの単位は、各学校で設けている選択科目から選ぶ仕組みになっています。
公立であれば古典や政治・経済、情報科学、ビジネス基礎などがありますが、私立では選択科目以外にさまざまなコースを設けていることが多いです。
以下は、私立通信制高校の専門コースの一例です。
- 芸能コース
- スポーツコース
- 美容コース
- 進学コース
- ペットコース
- 個別指導コース
私立の通信制高校では、卒業に必要な学習を進めながら国家資格が取得できたり、スポーツや進学に専念できたりするような体制が整えられています。
高校生活において、自分の目標や夢に近づけるような取り組みがされているのが特徴です。
通信制高校の公立・私立の生徒数
通信制高校に通う生徒数は、2020年度時点で日本全国で約26.5万人※に上り、全高校生の12人に1人が通信制高校の生徒に該当します。
参考:文部科学省|学校基本調査-令和5年度 結果の概要-より
公立と私立を比較すると、私立の方が学校数、生徒数、卒業者数の全てで公立を上回っています。
公立の通信制高校 | 私立の通信制高校 | |
---|---|---|
学校数 | 78校 | 179校 |
生徒数 | 約55,427人 | 約151,521人 |
卒業者数 | 約8,042人 | 約52,649人 |
1校当たりの平均生徒数 | 約711人 | 約846人 |
この差は、私立が全国どこからでも入学可能である点や、多様なコースや充実したサポート体制を持つことが理由です。
例えば、公立の通信制高校は基本的に地元在住者や勤労者に限定され、週1回程度の登校日が設けられていることが多いです。
対して、私立は遠隔地からでも学びやすい環境を整えています。
加えて、私立ではeスポーツや声優、芸術、美容など特化型のコースを設け、生徒の興味や将来の目標に応じた学びが得られます。
さらに、少人数指導やスクールカウンセラーの常駐など、手厚いサポートも私立の人気を高める要因です。
これにより、私立には公立の約3倍の生徒が通っています。
卒業率
公立の通信制高校にとって大きな課題になるのが、「卒業率の低さ」といっても過言ではないでしょう。
通信制高校は自主学習のため、全日制高校と比べても本人の意思や努力が必要不可欠です。
しかし公立通信制高校の卒業率は40%前後で、3年間で卒業できる生徒は20%にも及びません。
一方で私立の場合、100%に近い卒業率の学校も多く、最短で卒業するための徹底したサポートが行われています。
公立の学費がどんなに安くても、卒業までに何年もかかっていては意味がありません。
毎年の学費が積み重なり、卒業できたときには私立と同じくらいの学費を払っていたいというケースも少なくないでしょう。
不登校児童に対するサポート体制
そもそも通信制高校に通う生徒は、何かしらの事情を抱えていることが多いです。
その多くが、中学時代の不登校や学業不振であり、同じような理由で全日制高校から転入・編入してくる生徒も少なくありません。
しかし公立通信制高校では教員数が限られており、きめ細かいフォローができていないのが現状です。
そんな中、私立通信制高校では専門家によるきめ細かいフォローや個別学習などを設け、生徒一人ひとりをサポートできる体制を整えています。
カウンセラーが常駐している学校もあり、精神的なフォローや友だち作りのサポートなど、自立に向けたフォローアップが徹底されているのが特徴です。
入学・編入・転入時期
全日制高校や定時制高校へ入学・編入できるのは、基本的に4月のみです。
しかし通信制高校では4月と10月の年2回の入学を受け入れており、学校によっては随時受け入れ可能なところもあります。
ちなみに「編入」と「転入」の違いですが、編入は「前の高校を中退したあと空白期間を経て再入学すること」を指します。
転入は「中退せずに在学中に転校すること」を指し、転入に関しては全日制や通信制高校を問わず、随時受け入れている学校がほとんどです。
入学可能な地域
通信制高校では、入学できる地域の範囲によって広域通信制高校と狭域通信制高校に分類されます。
広域通信制高校と狭域通信制高校の違いについてまとめた表は以下のとおりです。
項目 | 広域通信制高校 | 狭域通信制高校 |
---|---|---|
受け入れ地域 |
|
|
スクーリング会場 | 全国各地に広く展開されており、自宅近くでスクーリングが受けられる場合が多い。 | 学校所在地やその近隣でのスクーリングが基本。 |
通学頻度 | 通学頻度が低い場合が多く、オンラインを活用して学習やレポート提出が可能。 | 通学頻度が高めの場合があり、定期的な通学が必要なことが多い。 |
学校の運営形態 | 基本的に私立が多い。 | 公立の通信制高校が多い。 |
入学条件 | 比較的条件が緩く、全国から入学可能。 | 所在地や通勤・通学可能な範囲に住んでいることが条件であり、場合によっては転居が必要。 |
広域通信制高校は、3つ以上の都道府県から生徒を受け入れる学校を指します。
日本全国どこからでも入学可能な学校が多く、スクーリング会場も広く展開されている場合があります。
また、オンラインを活用してレポートを提出したり、学習を進めたりできるシステムが整備されていることがあります。
したがって、通学頻度が低いという特徴もあります。
一方、狭域通信制高校は、入学できる地域が限定されています。
学校がある都道府県とその隣接する都道府県に居住していることが入学条件であることが一般的です。
また、通勤・通学可能な範囲に住んでいる場合にのみ入学が認められることが多いです。
該当の学校がある地域に居住していない場合、入学は難しい場合があります。
公立と私立の通信制高校では、入学可能な地域の広さや通学スタイルに違いがあります。
自身の生活環境や学習スタイルに合わせた選択が大切です。
通信制高校の数
通信制高校の設置数にも、公立と私立で大きな差があります。
文部科学省のデータ(令和3年3月時点)によると、全国にある通信制高校は、独立校と併置校を合わせて、公立が78校、私立が179校あるとされています。
参考:文部科学省「高等学校教育の現状について」
私立通信制高校の学校数が公立通信制高校の数を大きく上回っています。
公立の通信制高校は数が少なく、通える地域が限定されていることも多いため、学校の選択肢が限られる場合があります。
私立の通信制高校は数が多いだけでなく、全国規模での入学を受け入れる学校も多いです。
私立通信制高校は、選択肢が多いという魅力があります。
学校選びをする際は、自分の学習スタイルや通学可能な範囲を考慮することが大切です。
公立の通信制高校に通学するメリット・デメリット

冒頭で取り上げた「【概要】公立の通信制高校とは?」から伺える公立の通信制高校の特徴を基に、通学するメリット・デメリットをまとめると、以下の点が挙げられます。
通学するメリット | ・学費が安価で経済的負担が少ない ・20歳以上の生徒も多く、働きながら通いやすい ・多様な背景を持つ生徒と交流できる ・20歳以上の生徒も在籍しているため、働きながら通学できる |
---|---|
通学するデメリット | ・個別対応や特別対応が限られる ・通学する学校によってはカリキュラムが決まっている ・特定の専門分野や留学を目指すのが難しい ・スクーリングの日数が決められている ・入学、編入、転入は基本的に年1回(4月)の実施 |
ここでは、メリットとデメリットを詳しく解説し、公立の通信制高校を選択する際の判断材料とする情報を提供します。
公立の通信制高校に通学するメリット
公立の通信制高校最大のメリットは、学費の安さです。
私立の通信制高校と比較して、学費はおおむね10分の1程度に抑えられるため、家庭の経済的負担が軽減されます。
公立 | 私立 | |
---|---|---|
入学金 | 約500円 | 約1~5万円 |
3年間の授業料 | 約3万円 | 約90万円 |
3年間の諸費用 | 約6万円 | 約18万~30万円 |
3年間でかかる費用の総額 | 約90,500円 | 約109万~125万円 |
また、国や自治体の補助制度を活用すれば授業料が実質無償になる場合もあり、経済的理由で進学を諦めていた人々にとって重要な選択肢となります。
さらに、年齢や背景を問わず多様な生徒が集まる環境も魅力です。
20歳以上の社会人や子育て中の親が通学する例も多く、幅広い価値観や経験に触れられる機会が得られます。
アルバイトをしながら通学できる柔軟な体制も、多忙な生活を送る人にとって大きな利点です。
公立の通信制高校に通学するデメリット
一方、公立の通信制高校にはいくつかのデメリットがあります。
まず、学習や生活面でのサポートが限られている点が挙げられます。
生徒一人ひとりに個別対応する体制が整っていないため、学習に不安がある場合には、十分なフォローが受けられないことがあります。
また、カリキュラムが固定されている場合が多く、特定の専門分野を学びたい人や留学を目指す人には向かない場合があります。
さらに、スクーリング(対面授業)の日数が決まっており、遠方からの通学者にとっては負担になることもあります。
中途退学率が私立に比べて高い傾向も見られ、自己管理能力が求められることから、サポート不足で挫折してしまうケースも少なくありません。
これらの点を踏まえ、進路選択を慎重に検討することが大切です。
私立の通信制高校に通学するメリット・デメリット

冒頭で取り上げた「【概要】私立の通信制高校とは?」から伺える私立の通信制高校の特徴を基に、通学するメリット・デメリットをまとめると、以下の点が挙げられます。
通学するメリット | ・個別にカスタマイズされた学習プラン ・同じ講師から一貫して指導を受けられる可能性が高い ・イベントや学校行事が充実している ・幅広い専門知識や資格の取得が目指せる ・スクーリングの日数調節ができる ・入学、編入、転入の受け入れ時期が多い |
---|---|
通学するデメリット | ・学費が比較的高い(奨学金や特待生制度あり) ・校風や教育方針が合わない場合がある ・入学前に学校の雰囲気を確認する必要がある |
ここからは、私立通信制高校のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
私立の通信制高校に通学するメリット
私立の通信制高校の最大の魅力は、充実したサポート体制です。
学習面だけでなく、メンタル面でも支援を受けられる学校が多く、カウンセラーや個別指導担当が常駐している場合もあります。
また、以下のような幅広い専門分野に特化したカリキュラムが用意されており、自分の興味や将来の目標に合わせた学びが可能です。
- 大学進学を目指すための特化型コース
- eスポーツ特化型コース
- 美容特化型コース
- 芸術特化型コースなど
さらに、スクーリングの日数やスケジュールが調整可能であることも私立ならではの利点です。
これにより、地方や遠隔地に住む生徒でも通学が容易になります。
加えて、卒業率が高い傾向があり、教師との信頼関係が築きやすい環境が整っている点も大きなメリットです。
私立の通信制高校に通学するデメリット
一方で、私立の通信制高校にはいくつかのデメリットも存在します。
最大の課題は学費の高さです。
公立と比較すると、学費は約10倍に及ぶ場合があり、さらにタブレットや教材の購入費が追加で発生するケースもあります。
しかし、就学支援金や奨学金制度を活用すれば、経済的負担の軽減が図れます。
また、私立の学校はそれぞれ独自の教育方針や校風を持つため、入学後に学校の雰囲気が合わないと感じるケースもあります。
事前にオープンスクールや説明会に参加し、自分に合った学校を慎重に選ぶことが重要です。
さらに、私立の生徒は15~17歳の高校生が中心で、働きながら通学することが難しい場合がある点も注意が必要です。
これらを考慮し、自身のライフスタイルや学習目標に最適な学校を選ぶことが求められます。
通信制高校は公立と私立のどっちがおすすめ?

同じ通信制高校でも、公立と私立でまったく違うことが理解できたと思います。
どちらかの学校を選ぶとき、何を基準に決めたらいいのでしょうか?
学費の安さを重視するなら公立がおすすめ
公立通信制高校は、全日制の公立と比べても「学費の安さ」が突き抜けています。
「出来るだけお金をかけずに高卒の資格を取りたい」と考えるのであれば、公立の一択になるでしょう。
しかし卒業サポートは期待できないので、学習にストイックに取り組める意志が重要になってきます。
きめ細かいサポートを希望するなら私立がおすすめ
「不登校気味で決められた日に登校できるか不安」
「卒業までに社会性を身に付けたい」
「中学1年から学習をやり直したい」
このような要望がある場合は、きめ細やかなフォローが行き届いている私立通信制高校がベストです。
学校にカウンセラーや社会福祉士が常駐していることも多いので、親御さんも安心して通学させられるでしょう。
私立の学校は今も増え続けており、革新的な授業や学びを提供する高校も続々とでています。
最先端のオンライン授業を展開したり、バーチャル遠足やバーチャル英会話を楽しんだりと、全日制よりも充実した学習が受けられるのも魅力です。
私立通信制高校が多くの生徒に選ばれている理由

ここまでを読んで、公立と私立の大きな違いについての知識が深まったと思います。
公立は学費の安さが、私立は自由度の高さが魅力といっていいでしょう。
しかし実は、多くの生徒が私立通信制高校を選んでいることをご存知でしょうか?
本章では、学費が高い私立の方が人気の理由について解説したいと思います。
30年で私立通信制高校の数は10倍に増えている
少子化の流れに伴い、日本の高校総数は減少傾向です。
とくに全日制・定時制の高校数は、ここ30年で600校ほども減少していました。
高校生の人数も減っているので、当然といえば当然のことです。
以下に、文部科学省のデータをもとに、高校数の変化をまとめました。
全日制・定時制 | 通信制 |
---|---|
公立 私立 合計 | |
平成2年 5,506 | 67 17 84 |
平成7年 5,501 | 68 25 93 |
平成12年 5,478 | 69 44 113 |
平成17年 5,418 | 76 99 175 |
平成22年 5,116 | 72 137 209 |
平成27年 4,939 | 77 160 237 |
令和2年 4,874 | 78 179 257 |
ご覧の通り、通信制高校の中でも私立だけが増え続けており、30年ほどで10倍に増えていることが分かります。
私立の通信制高校は生徒一人ひとりに対するサポートがきめ細やかで、いろんな悩みや要望に対応できるということで需要が高まっているようです。
また私立の場合、本校が自宅から遠くても、地方に分校を構えているケースが少なくありません。
「ときどきは登校したい」「高校で友だちを作りたい」と思っている人にとっては、無理なく通える距離に分校があるのも人気の秘訣と言えるでしょう。
サポート校による卒業サポートが手厚い
私立の通信制高校は、卒業率が高いことも人気の理由です。
そして、その卒業率の高さは、「サポート校」の存在も大きいと思われます。
サポート校とは、通信制高校に通う生徒が3年間で卒業できるよう、単位取得やメンタルサポートを行う民間の教育機関です。
言うなれば「学習塾」や「予備校」のような存在で、勉強はもちろんプライベートの相談にも応じてくれます。
サポート校は法的な学校ではないため、通信制高校と同時入学しなくては卒業資格を得ることはできません。
そのため、通信制高校とダブルで授業料がかかることになります。
サポート校の学費を合わせると年間100万円を超える学校もあるので、「3年間で卒業しよう」という意欲も高まるでしょう。
通信制高校のメリット、デメリットについて詳しく知りたい方は是非 「今知っておくべき!通信制高校の現実|8つのメリットとデメリット」を参考にしてみてください!
私立の通信制高校の学費を抑える方法

「私立に通いたいけど学費が高い」と悩んでいませんか?
ここでは学費を重視している方に向けて、「学費を抑えて私立通信制高校に進学する方法」を解説していきます。
スクーリングが少ないコースを選択する
自宅学習をメインにするか、通学をメインにするかで、私立通信制高校の学費は大きく変わります。
スクーリング回数を増やすと学習サポートが強化されるため、学費は必然的に高くなると覚えておきましょう。
通学回数ごとの、私立の年間学費の目安をご覧ください。(※当社調べ)
学習スタイル | 年間学費 |
---|---|
通信コース(自主学習型) | 約25万円~ |
週3日進学コース | 約45万円~ |
週5日進学コース | 約75万円~ |
通学回数によって、学費に3倍ほどの差額が生じています。
できるだけ学費を抑えるためには、通学回数を絞って自主学習に励むことが重要です。
国や自治体の制度を利用する
スクーリング回数を調整する以外にも、通信制高校の費用を抑える方法があります。
- 1.就学支援金
- 2.奨学金
- 3.特待生制度
では、3つの制度内容を詳しく解説します。
1. 就学支援金
令和2年4月から、私立の通信制高校でも「就学支援金制度」が利用できるようになりました。
就学支援金制度により、多くの世帯が「授業料が実質無償化」されています。
世帯年収ごとの就学支援金の支給額は、以下の通りです。
世帯年収 | 公立 | 私立 |
---|---|---|
590万円未満 | 336円/単位(授業料は実質無償化) | 最大12,030円/単位(授業料は実質無償化) |
590万円~910万円未満 | 336円/単位(授業料は実質無償化) | 4,812円/単位(負担分は自己負担) |
就学支援金制度は国が学費の一部を負担してくれる制度で、卒業しても返済の必要がありません。
ただし、以下に該当する方は利用できないので注意しましょう。
- 高校などを一度卒業した人
- 高校などに通算36ヶ月より多く在籍している人
また就学支援金は、入学金や教材費といった授業料以外の費用には利用できない決まりになっています。
2. 奨学金
奨学金制度とは、進学にお金が必要な学生に向けて、学費の付与や貸与を行う制度です。
就学支援金との併用が可能なので、経済的な余裕がない方でも私立の通信制高校に行ける可能性が高まるでしょう。
奨学金にもさまざまな種類があり、都道府県や地方自治体が実施している制度は無利息で借り入れられるものが多くなります。
- 生活福祉資金・・・低所得・障害者・介護を要する高齢者のいる世帯を対象にした制度
- 高校生等奨学給付金・・・授業料以外の教育費(教科書・教材費など)が受け取れ返済不要
- あしなが育英会・・・親を亡くしたり重度後遺障害で働けなかったりする家庭の子どもを支援
ご自身が利用できる制度がないか、お住まいの地域の奨学金について調べてみましょう。
3. 特待生制度
「特待生」という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、特待生制度とは特定の分野で成績が優秀な生徒の学費を免除・減免する制度のことです。
通信制高校でも、スポーツ・芸術・学力などにおいて、特待生制度を設けている学校があります。
特待生に選ばれる基準は、入学試験の結果や内申書、学校に定められた審査に合格することです。
ただし特待生として入学したあと、1年間の成績や成果が思わしくなかった場合は、特待生制度から外されてしまう可能性もあるので注意しましょう。
通信制高校の公立か私立かは自分の目的に合わせて選ぼう

通信制高校の私立と公立の違いについて、さまざまな角度から徹底比較しました。
学費だけをみれば公立1択ですが、大切なのは「卒業資格を得ること」、そして卒業したあとの「進路」です。
就職する、進学するなどの選択に対し、どのようなサポートをしてくれるかを考えたとき、自分に必要な教育機会を与えてくれるのはどんな高校かを考えてみましょう。
また学校生活が少しでも充実した時間になるよう、あなたが輝ける場所を入念に選ぶことも大切です。
どちらを選択するにしても、後悔のない高校生活が送れるよう前向きに行動してください。
通信制高校の後悔しない選び方について詳しく知りたい方は是非 「通信制高校の後悔しない探し方は?選ぶときのポイントを徹底解説」を参考にしてみてください!