HSCが原因で不登校になる?親のせい?不登校になる理由・親ができる接し方を解説 更新時間 2025.12.04
HSC(Highly Sensitive Child)は、環境刺激に対する感受性が非常に高いという特徴を持つ生まれ持った気質のことで、アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン博士が1996年に提唱しました。
日本人の約5人に1人にHSCであるとされ、HSC気質の子どもは不登校になりやすいという報告がされています。
大人と違って子どもの場合は、集団行動や学校生活に対して馴染めず不登校になってしまう傾向が多いとされています。
引用:一般財団法人日本精神医学研究センター「Highly Sensitive Child(HSC)」
なお、生まれ持った気質のため、親の育て方や家庭環境そのものがHSCの原因になるという科学的根拠は確認されていません。
この記事では、HSCの主な原因や、HSCが原因で不登校になる理由を詳しく解説します。
また、子どもがHSCかセルフ診断する方法や、親ができることもあわせて解説しますので、ぜひ最後まで読んでください。
不登校に多いHSCの原因
ひとより敏感なHSCの子どもは、生まれつき「音・光・人間関係」などの刺激を強く受け取りやすい気質を持っています。
学校は騒がしく人も多いため、敏感な子にとってストレスが溜まりやすい環境です。
そのため、「生まれつきの敏感さ」と「刺激が多い学校環境」が重なることで、心身の負担が限界に達して不登校につながる傾向にあります。
ここでは、そもそもHSCの原因は何なのか、親に原因はあるのかについて詳しく解説します。
【不登校に多いHSCの原因】
- HSCの原因は生まれつきの気質によるもの
- HSCは親の育て方が原因ではない
HSCの子は通信制高校の方が向いてるってほんと?HSCとの向きあい方も伏してご紹介
HSCの原因は生まれつきの気質によるもの
結論、HSCは「生まれつきの性質」であり、親の育て方・環境などで後天的にあらわれるものではありません。
原因は生まれつき備わった「感覚処理感受性(SPS)」の高さによるものです。
感覚処理感受性(SPS)とは、音・光・人の表情など周囲の刺激を強く受け取る神経系の特性を指します。
ある大学の研究では、HSCの性質の約半分(約47%)は遺伝によって決まるとされています。
参照:フローニンゲン大学「Unraveling the sensitive brain」
生後早期から確認されることが多く、後天的な環境や親の育て方によって生じるものではありません。
また、HSCは「DOES」と呼ばれる以下4つの特徴を持ちます。
- Depth:物事を深く考える
- Overstimulation:刺激を受けやすい
- Empathy(Emotional):気持ちが動きやすい
- Subtlety:小さな変化に気づきやすい
これらは神経系の働きによる気質の差であり、病気や障害とは異なるものです。
HSCは親の育て方が原因ではない
HSCの性質は生まれつき備わっているものであり、「親の育て方が原因でHSCになる」という科学的根拠はありません。
ただし、HSCは周囲の環境に強く影響されます。
そのため、安心できる環境では能力を発揮しやすい一方で、刺激の多い環境ではストレスを受けやすい特性があります。
つまり、親の育て方や環境によって、生まれ持ったHSCという性質が強化される可能性はあるのです。
参照:フローニンゲン大学「Unraveling the sensitive brain」
HSCが原因で不登校になる理由
HSCは生まれつき刺激を受け取りやすい性質があり、共感力の高さ・感情の豊かさ・気づきが多い点などが強みです。
一方で、学校のように音・人・情報が多い環境ではストレスを感じやすい傾向にあります。
負担が続くと心身の疲労が蓄積し、学校に通うこと自体が大きなストレスになるのです。
つまり、HSCの子どもの不登校は「甘え」ではなく、生まれつきの敏感さと過剰な刺激が合わさることで起こると考えられます。
ここでは、HSCの子どもが不登校になる理由を詳しく解説します。
【HSCが原因で不登校になる理由】
- 学校環境での刺激で敏感さが強化されるから
- 人間関係で疲れやすいから
- ストレス・不安を感じやすいから
- 学校のルールが合わないと感じやすいから
- 限界まで頑張ってしまうから
不登校になる原因ランキング10選│原因がわからないときの対処法を解説!
学校環境での刺激で敏感さが強化されるから
HSCは、音・光・人の動きなどの刺激を他の子より強く受け取りやすい特性があります。
実際に国内のある調査では、「学校でとても疲れる」と答えたHSCの子どもの割合は78.1%で、HSCではない子どもの40.4%を大きく上回りました。
参照:茨城大学教育学部紀要「Highly Sensitive Childが学校生活で抱える困難と教員の対応」
HSCの子どもとそうではない子どもでは、学校生活の満足度に大きな差があることが分かります。
学校はチャイム音、話し声、集団行動など刺激が多い場であり、HSCはそれらを細かく受け止めるため疲労が蓄積しやすくなります。
刺激への敏感さが繰り返されることで負荷が増し、結果として登校が難しくなるケースが生じるのです。
人間関係で疲れやすいから
HSCは人の表情や声の変化に気づきやすく、他者の機嫌に影響を受けやすいです。
調査では、欠席理由として「人間関係」を挙げた割合がHSCは30.3%で、HSCではない子どもの8.2%の3倍以上でした。
また、「自分らしくできる」と感じている割合もHSCは62.5%で、HSCではない子どもの82.2%より低いことが分かっています。
参照:茨城大学教育学部紀要「Highly Sensitive Childが学校生活で抱える困難と教員の対応」
人間関係での消耗が続くと学校が負担の大きい場所となり、不登校につながりやすくなります。
ストレス・不安を感じやすいから
HSCは生まれつき感情の感じ方が強く、不安や緊張を抱きやすい傾向があります。
ある調査では、HSCの多くが「学校で強い疲労や悩みを感じる」と回答し、ストレス反応の高さが確認されています。(茨城大学教育学部紀要より)
刺激が多い状況では恐怖や不安を強く感じやすいため、授業・行事・人間関係などの負荷が重なると、登校が継続困難になることもあります。
長期間ストレスが続くことで心身が限界に近づき、結果として不登校という形で負荷の軽減を図るのです。
学校のルールが合わないと感じやすいから
HSCは物事を深く考える性質があるため、学校のルールや集団行動に強い違和感を抱くことがあります。
例えば、「どうしてこのルールが必要か」を考えすぎて疲れたり、納得できない状況にストレスを感じやすくなります。
こうした「合わない感覚」が積み重なると、学校が安心できない場所になり、結果として不登校になる場合があります。
限界まで頑張ってしまうから
HSCは責任感が強いうえに我慢強く、周囲に迷惑をかけないよう行動する傾向があります。
そのため、周囲から「いい子」「問題がない子」と見なされることが多く、困っていても気づかれにくいです。
結果的につらい状況でも無理を続け、限界まで頑張ってしまうことがあります。
実際、HSCは意見が対立した際に「自分の意見をあきらめる」と回答した割合が33.3%で、HSCではない子どもの14.9%より高く、自己犠牲が大きくなりやすい傾向が確認されています。(茨城大学教育学部紀要より)
「気づかれにくい負担」が積み重なることで、外からは理由が分からない不登校になるケースが発生します。
子どものためのHSCのセルフ診断テスト
HSCは生まれつきの特性であり、医学的な診断名ではありません。
そのため、子どもがHSCかどうか病院で診断してもらえるわけではないです。
しかし、HSCの提唱者であるエレイン・N・アーロン博士が作成した23項目のセルフチェックリストをもとに、子供がHSCかどうか判断可能です。
以下の質問で「YES」が12以上ある場合、子どもがHSCである可能性があります。
ただし「YES」が12未満であっても、特定の項目で一致度合いが高い場合、HSCの可能性があります。
子どもがHSC気質かどうか判断する際の参考にしてください。
【セルフ診断テスト】
- 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ
- 他人の気分に左右される
- 痛みにとても敏感である
- 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる
- カフェインに敏感に反応する
- 明るい光や、強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などにに圧倒されやすい
- 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい
- 騒音に悩まされやすい
- 美術や音楽に深く心動かされる
- とても良心的である
- すぐにびっくりする(仰天する)
- 短期間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう
- 人が何かで不快な思いをしている時、どうすれば快適になるかすぐに気づく(たとえば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど)
- 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ
- ミスをしたり物を忘れたりしないよういつも気をつけている。
- 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
- あまりにもたくさんのことが自分の周りで起こっていると、不快になり神経が高ぶる
- 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
- 生活に変化があると混乱する
- デリケートな香りや味、音、音楽などを好む
- 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している
- 仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
- 子供のころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた
引用:エレイン・N・アーロン(1996)「The Highly Sensitive Person」
日本語訳(2000年):「ささいなことにもすぐに動揺してしまうあなたへ。」訳:富田香里
出版社:SBクリエイティブ株式会社
HSCと発達障害の違い
| 違い | HSC | 発達障害 |
|---|---|---|
| 分類 | ・生まれつきの気質 ・診断名ではない | ・医学的な障害 ・診断が必要 |
| 共感性 | 共感力が非常に高い | 他者の意図・感情を読み取りにくい傾向 |
| 感覚の過敏さ | 刺激を深く処理するため全体的に敏感 | 感覚処理の問題で「敏感」「鈍感」が極端に出る |
| 対人関係の特徴 | 空気を読みすぎて疲れやすい | 空気を読むこと自体が難しい場合がある |
| 原因 | 感覚処理感受性(SPS)の高さ | 脳機能の発達特性によるもの |
HSCは「生まれつき刺激を受け取りやすい気質」であり、医学的な病気や障害ではありません。
一方、発達障害(ASD・ADHD)は「脳の特性によって日常生活に困難が生じる状態」で、医師による診断が必要です。
HSCは共感力が非常に高く、周囲の感情や空気を敏感に読み取る点が特徴です。
一方、発達障害は、相手の意図や空気を読み取ることが難しい傾向があり、この点がHSCとの明確な違いとされています。
また両者とも音や光に敏感な場合がありますが、HSCは「感じ取り方が強い」こと、ASDでは「脳の感覚処理の特性」が原因と説明されています。
特性が重なるケースもあるため混同されやすいですが、重要なのは診断名ではなく「その子がどんな場面で困っているか」を理解し、環境調整やサポートを行うことです。
HSCの子どもに親ができること
HSCは生まれつき刺激を受け取りやすい性質を持つため、安心できる関わりや環境が重要です。
親との関わり方によって、子どものストレスの軽減や自己肯定感の向上につながります。
ここでは、HSCの特性に合ったサポート方法を、根拠に基づいて解説します。
【HSCの子どもに親ができること】
- 子どもが感じたことを否定せずに受け止める
- 子ども自身を尊重して自己肯定感を育てる
- 生活リズム・予定の見通しを立てる
- NG行動を避ける(行動の強制・他者との比較・感情的な叱責など)
子どもが感じたことを否定せずに受け止める
HSCは周りの変化に気付きやすかったり感受性が豊かな一方で、小さな出来事でも強く反応する傾向があります。
また、感じたことを否定されると負担が大きくなります。
例えば「体育の音が大きくて怖かった」と訴えた場合、大人にとっては些細でも本人には強い刺激です。
そのため、「そんなことで?」「気にしすぎ」などの否定的な言葉は避け、まず事実として受け止めることが重要です。
また、気持ちを言葉にしにくい場合は親が状況に合わせて気持ちを代弁することで、子どもは安心しやすくなります。
感情を否定されずに受け入れられた経験が積み重なると、自己肯定感の向上につながります。
子ども自身を尊重して自己肯定感を育てる
HSCは人の気持ちを察しやすいという強みがある一方、周囲に合わせすぎて疲れやすく、自己肯定感が低下しやすいです。
こうした子どもには、結果だけでなく「過程」や「気づき」を認めることが効果的です。
例えば、発表が苦手でも「みんなの様子をよく見て行動できたね」と過程を評価することで、特性を強みとして認識しやすくなります。
短所に見える特徴を否定せず、「慎重に考えられる」「よく気づける」などポジティブに言い換えて伝えることで、自分を肯定する感覚が育ち、ストレスへの耐性を高めることにつながります。
生活リズム・予定の見通しを立てる
HSCは、予期しない出来事や急な予定変更に強い不安を感じやすい傾向があります。
しかし、起きる時間や寝る時間をルーティン化して生活リズムを整えてあげたり、事前に予定を伝えるなど「次に何が起こるか」を把握できる状態を作ることで、不安の軽減につながります。
例えば、「今日は公園に行くよ」と直前に伝えると戸惑うことがありますが、「15時に公園に行くよ、そのあと帰っておやつだよ」と事前に流れを説明すると安心しやすいです。
また、刺激を受けやすいため、予定を詰め込みすぎず休息時間を確保することも重要です。
NG行動を避ける(行動の強制・他者との比較・感情的な叱責など)
HSCは否定的な言葉や比較を強く受け取りやすいです。
そのため、「周りはできている」と他者と比較したり、行動を無理に促すことは、自己肯定感の低下や不安につながる可能性があります。
例えば「お姉ちゃんはできるのに」と比較されると、自己肯定感が低下しやすくなります。
また、初めての場所を怖がる子に「早くしなさい」と急がせると逆に不安が増す場合があります。
感情的な叱責も強いストレスとなるため、落ち着いて状況を伝える関わりが重要です。
子どものペースを尊重し、安心して行動できる環境を整えることがHSCに適した対応といえます。
HSCの原因に関してよくある質問
HSCの原因・不登校との関係性などについて、よくある質問に回答しました。
【HSCの原因に関してよくある質問】
- HSCは親のせい?病気が原因?
- HSCの子どもに親ができることは何?
- HSCによる不登校を乗り越えるには?
- HSCと発達障害の違いは?
- HSCとHSPの違いは?
不登校あるある15選!不登校の方にしてはいけないNG行動あるあるも紹介!
HSCは親のせい?病気が原因?
HSCは「生まれつきの気質」であり、病気でも障害でもありません。
また、親の育て方が原因になるという科学的根拠もないです。
ある研究では、感覚処理感受性(SPS)という遺伝的要因が約4〜5割関与していると報告されており、育児方針によって発生したり治ったりする性質ではないとされています。(フローニンゲン大学研究より)
なお、HSCは環境の影響を受けやすいため、安心できる関わり方があると適応しやすくなる一方、強い叱責や急な変化が多い環境ではストレスが蓄積しやすい特性があります。
つまり「原因は親」ではなく、「親の関わり方は子どもの適応を左右する要素の一つ」であるという認識が適切です。
HSCの子どもに親ができることは何?
HSCに対して重要なのは、「刺激に敏感な特性を理解し、安心できる環境をつくること」です。
親ができる具体的な対応として、以下が挙げられます。
- 子どもの感じたことを否定せず受け止める
- 敏感さを長所として言語化し自己肯定感を育てる
- 予定や変化を事前に伝え見通しを持たせる
- 比較や強制・感情的な叱責を避ける、など
安心できる環境を整えることでHSCの負担を大幅に軽減し、日常の安定につながります。
HSCによる不登校を乗り越えるには?
HSCの不登校は「怠け」「甘え」ではなく、「刺激の受け取りすぎにより心身が限界に達した状態」によるものです。
そのため、不登校を乗り越えるために重要なのは、学校に戻すことよりも先に「疲労を回復し、安心できる環境を整えること」です。
以下のようなアクションを取り、子どもの心身が回復するようサポートしましょう。
- 十分な休息を確保する
- 苦手な刺激(音・人間関係・突発的な予定変更など)を特定し調整する
- 本人のペースに合わせて段階的に外出や学習を再開する
- スクールカウンセラーや支援機関と連携する、など
HSCと発達障害の違いは?
HSCは「刺激に敏感な気質」であり医学的な診断名がない一方、発達障害は「脳の働きによる発達特性」であり医師による診断が必要です。
また、両者は感覚過敏や疲れやすさなど一部の特性が似ていますが、根本的な違いは「共感性の質」と「困難が生じる理由」にあります。
HSCは共感力が非常に高く、他人の気持ちを過度に受け取って疲れやすい傾向にあります。
一方、発達障害では相手の意図を読み取ることが難しい場合があります。
子どもがどちらに当てはまるのか悩んだ場合、病院で専門医師に相談したり、HSCセルフ診断テストを活用しましょう。
HSCとHSPの違いは?
HSC(Highly Sensitive Child)は「ひといちばい敏感な子ども」を指します。
一方、HSP(Highly Sensitive Person)は「ひといちばい敏感な人」のことで、HSCのいわゆる大人版です。
ただし、成長段階にあるHSCは学校環境・生活リズム・親の関わりなど外部要因の影響を受けやすいですが、HSPは大人として自分で環境調整を行いやすい点が異なります。
HSC・HSPを提唱するエレイン・N・アーロン博士によると、どちらも人口の15〜20%程度存在するとされています。
HSC気質の子どもが不登校になりにくい安心できる環境作りをしよう
HSCは生まれつき刺激を受け取りやすい特性があり、学校の騒音・人間関係・急な予定変更などでストレスを蓄積しやすい傾向にあります。
実際に、学校環境の刺激・人間関係の疲れ・強いストレスなどが原因で不登校になるHSCは多いです。
HSCの子どもの不登校を防ぐために重要なのは、家庭を「安心できる場所」として整えることです。
例えば、子どもの感じ方を否定せずに受け止め、自己肯定感を育て、生活の見通しを持たせることが、ストレス軽減に効果的です。
HSCの特性を理解した環境づくりをして、子どもの心の安定につなげましょう。



