司法試験を受験するためには原則として法科大学院の卒業もしくは予備試験に合格しなければいけません。
法科大学院ルートを検討している人の中には、「法科だ区院入試の対策って何をすればいいの?」「どれくらい時間がかかるものなの」と気になる方もいるはずです。
そこで今回は法科大学院の入試の内容や難易度、スケジュールについて解説してきます。
ぜひ参考にしてみて下さい。
法科大学院入試の入試内容の違い
法科大学院入試は「未修コース」「既修コース」に大きく分かれており、それぞれ対象者や入試内容が異なります。
「未修コース」は大学院以前に法律を勉強してこなかった人向けのコースで、通常3年間かけて法律の基礎の基礎から学ぶのが特徴です。
一方「既修コース」は大学院以前に法律を学んだことがある方向けのコースであり、2年の短縮過程となっています。
ここでは、それぞれのコースの入試内容や勉強時間の目安について紹介します。
未修コース
未修コースの入試は、基本的に「志願理由書」「小論文」「面接」による人物重視の選抜が行われることが特徴です。
志願理由書ではおもに志望動機や目指す法曹像について記述し、願書と共に大学院に提出するものです。
小論文については時事問題や与えられた資料を読み取って自分の意見を記述する形式が多く、基本的には法律の知識は必要ありません。
なお、面接を実施していない大学院もあるため、必ず受験予定の大学院の入試要項を確認することが大事ですです。
未修コースは既修コースに比べて比較的短期間での対策ができるため、私立大学院を考えている方は、早い方で受験前年の9月頃から、遅い方でも12月頃から勉強を始めるのがいいでしょう。
一方、国立大学院を目指す方は早い方で受験前年の11月頃から、遅い方でも1月頃から勉強を始めるのがベストです。
以上のことから未修者コースは法科大学院入試の8~10カ月前から準備をはじめ、小論文や面接の対策に時間を割くことが望ましいと考えられます。
既修コース
既修コースの入試は「志願理由書」と「法律に関する試験」が問われます。
志願理由書に関しては先に紹介した未修コースと基本的に違いはありませんが、法律に関する試験は基本7法に関する基礎的な知識が問われます。
大学院によっては上3法に民事訴訟法と刑事訴訟法を加えた5科目のみを扱う大学院や行政法を除いた6法のみを対象とする大学院もあるため志望校の入試の傾向を抑えることが大事です。
既修者コースではできるだけ早く準備を始めることが何よりも大事であり、これまでしっかりと勉強してきた方でも約10か月程度、未勉強の方は1年数ヶ月程度は見ておく必要があります。
また私立大学院を考えている方は早い方で受験前年の4月または5月頃から、遅い方でも10月頃からしっかりと勉強を始めるのがいいでしょう。
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法科大学院入試に必要な勉強時間の目安
ここでは、「未修コース」「既修コース」それぞれに必要な勉強時間の目安・スケジュールについて紹介します。
未修の場合は350時間程度
法科大学院入試(未修)で必要な勉強時間は350時間程度必要だといわれています。
1日2時間だとするとおおよそ半年程度となります。
とくに小論文、面接、志望理由書などは自分では評価しずらいので、予備校の先生やチューター、志望する大学院に入学した先輩といった第三者からの添削を受けることをおすすめします。
添削には返却まで時間がかかる場合もあるので、できるだけ時間に余裕をもって早めに取り組むようにしましょう。
一般的な未修コースを目指す人の学習スケジュールは以下の通りとなります。
- 試験6~4ヶ月前…大学院の出題傾向の分析、小論文知識のインプット
- 試験4~2カ月前…小論文の添削を受ける、面接対策、志願理由書作成(アウトライン)
- 試験2~1ヶ月前…小論文の添削を受ける、面接対策、志願理由書作成・提出
- 試験1~当日…小論文の添削を受ける、面接対策として第三者からの模擬面接を受ける
既修の場合
法科大学院入試(既修)で必要な勉強時間は1日2時間だと仮定して、700時間程度必要です。
こちらも1日2時間程度確保する場合、受験日から1年半前には手を付け始めるか、遅くても1年前には取り組まなければいけません。
- 試験日の前年の8月頃…法律知識のインプット
- 試験日の前年の9月~試験年の6月…法律知識のインプット・アウトプットの繰り返し・論文対策開始
- 6月~8月…過去問演習
- 私立入試直後…国立入試対策(過去問演習・苦手分野の克服など)
法科大学院入試「未修コース」の対策方法
ここでは、法科大学院入試「未修コース」の対策方法について紹介します。
➀小論文の添削を行う
法科大学院対策のための小論文の書き方を習得するには、まず志望する法科大学院が公開している過去の問題を確認するようにしましょう。
法科大学院対策を行っている予備校では効果的な小論文の書き方を教えていることがあるので利用するのもひとつです。
また、小論文の学習においては添削が不可欠です。
実際の答案を作成して合格水準に達しているかを確認するために、経験豊富な講師が在籍する予備校の添削をうけることをおすすめします。
さらに、志願理由書も願書と共に小論文試験の約1か月前に法科大学院に提出しなければいけません。
この志願理由書は多くの大学院で一次審査(いわゆる足切り審査)に使用されるため、丁寧に作成する必要があります。
直前期は志願理由書の対策に多くの時間をかけることになるため、余裕をもって小論文対策を行っておくのが望ましいでしょう。
➁面接対策は小論文対策を並行して行う
未修コースの面接試験は小論文試験と同じもしくは近い日程で行われることが多いため、小論文式試験の対策と並行して行うのがいいでしょう。
未修コースの面接で聞かれる内容は志願理由書で書いたことや小論文対策として学んだ内容などが挙げられます。
したがって面接独自の対策のために費やす時間は比較的短く済みますが、模擬面接を受けて雰囲気を掴むのもひとつです。
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法科大学院入試「既修コース」の対策方法
ここでは、法科大学院入試「既修コース」の対策方法について紹介します。
➀基本7科目の基礎を徹底的に固める
既修コースの入試では、法律科目の論文式試験が一般的です。
法科大学院の法律科目には、憲法、行政法、民法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、商法(志望校のによっては6科目)が含まれています。
基本部分が問われるため、基本を忠実に固めることが重要です。
テキストは対象を限定して反復学習がポイントです。
1科目につき1冊、多くても2冊の基本書・テキストを選び、1周をじっくりやるよりもとりあえず1周するようにしましょう。
法律の論点は相互に関連しており、法律全体を知った状態で読むと、理解が進むこともあります。
インプットでは、テキストを限定して1周にかける時間を少なくして繰り返し復習すると効果的です。
➁論文の添削を受ける
答案構成の作成方法や実際の論文の答案内容については、添削を受けることが効果的です。
論文式試験では、自分で書けているつもりでも正確な論述が難しいことが少なくありません。
予備校の添削制度を活用し、積極的に添削を受けることで自信につながるでしょう。
➂過去問を繰り返し解く
予備試験の対策が進んだら、過去問を用いて基本知識のマスターを確認しましょう。
過去問演習では、基本問題に対する論点抽出と論述の正確性を確認し、できていない部分は再びインプットに戻って復習します。
法科大学院入試は基本問題と応用問題で構成され、特に基本問題に確実に答えることが合格の判断基準となります。
過去問演習を通じて、基本問題に対する確かな実力を身につけ、論述力を向上させることが合格への近道です。
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令和6年度の法科大学院の入試倍率・合格者
倍率順位 | 法科大学院名 | 受験者 | 合格者 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
1 | 日本大学 | 446 | 55 | 8.11 |
2 | 専修大学 | 312 | 39 | 8.00 |
3 | 筑波大学 | 297 | 44 | 6.75 |
4 | 関西大学 | 443 | 71 | 6.24 |
5 | 法政大学 | 298 | 62 | 4.81 |
6 | 東京大学 | 1,072 | 244 | 4.39 |
7 | 東北大学 | 384 | 90 | 4.27 |
8 | 東京都立大学 | 233 | 60 | 3.88 |
9 | 学習院大学 | 116 | 33 | 3.52 |
10 | 上智大学 | 142 | 41 | 3.46 |
11 | 一橋大学 | 313 | 97 | 3.23 |
12 | 広島大学 | 109 | 34 | 3.21 |
13 | 関西学院大学 | 300 | 94 | 3.19 |
14 | 神戸大学 | 567 | 187 | 3.03 |
15 | 同志社大学 | 449 | 151 | 2.97 |
16 | 慶應義塾大学 | 1,026 | 348 | 2.95 |
17 | 大阪公立大学 | 155 | 53 | 2.92 |
18 | 岡山大学 | 97 | 34 | 2.85 |
19 | 京都大学 | 559 | 198 | 2.82 |
20 | 九州大学 | 145 | 55 | 2.64 |
21 | 立命館大学 | 526 | 204 | 2.58 |
22 | 名古屋大学 | 178 | 70 | 2.54 |
23 | 明治大学 | 404 | 161 | 2.51 |
24 | 南山大学 | 65 | 26 | 2.50 |
25 | 琉球大学 | 47 | 19 | 2.47 |
26 | 愛知大学 | 93 | 38 | 2.45 |
27 | 大阪大学 | 474 | 199 | 2.38 |
28 | 福岡大学 | 85 | 36 | 2.36 |
29 | 早稲田大学 | 852 | 369 | 2.31 |
30 | 金沢大学 | 41 | 18 | 2.28 |
31 | 千葉大学 | 173 | 77 | 2.25 |
32 | 北海道大学 | 129 | 58 | 2.22 |
33 | 中央大学 | 1,081 | 521 | 2.07 |
34 | 創価大学 | 49 | 25 | 1.96 |
全体 | 4465 | 964 | 4.63 |
令和6年度の法科大学院入試では志願者数、受験者数、合格者数、入学者数すべてにおいて過去5年間で最多となりました。
入学者が定員を下回っている法科大学院は34校中17校と、まだ半数が定員割れしているものの、入試倍率は1校を除きすべて2倍以上となっているため法科大学院入試は誰でも簡単に合格できる試験ではないといえます。
また入試の難易度は倍率だけでなく、どのようなレベルの受験生が受験するかにも影響されるため倍率だけで判断するのはおすすめしません。
あくまで参考程度にしてみてください。
【Q&A】法科大学院入試に関するよくある質問
最後に、法科大学院入試に関する数多い質問を紹介します。
Q1.法科大学院入試には受験資格はある?
法科大学院入試には一定の受験資格が求められます。
通常、大学卒業または同等の学力が基本条件です。
法律の知識がゼロの方には未修者コースがあるため、出身学部は問われません。
また、大学に3年以上在籍し、優秀な成績を収めた者には「飛び級」の制度が適用されることもあります。
Q2.法科大学院入試の併願は可能?
法科大学院の入試は、原則として他の法科大学院との併願が認められています。
ただし、各大学院の受験要件やスケジュールが異なるため、詳細な情報を確認し、適切な対応をすることが重要です。
Q3.法科大学院の併願時のポイントは?
複数の法科大学院を受験する際には、それぞれの大学院の特徴やカリキュラム、選考方法を比較検討することが重要です。
特に既修者コースにおいては「試験範囲がどれだけ被っているか」もポイントになります。
試験範囲が被っているほど、各学校への試験対策がより効果的になり、学習の負担も軽減されます。
また、1次日程の試験直後に、国立大学の2次募集が行われる場合があります。
不合格の場合を考慮し、2次募集の出願時期を見逃さないようにしましょう。
志望校ごとに合格基準や入試の難易度が異なるため、戦略的に受験するための計画を立てることが重要です。
Q4.国立大学も併願できる?
国立大学の法科大学院も一般的に併願が認められています。
ただし、併願が禁止されていない学校に限ります。
国立大学では書類選考での足切りが強いため、いくつかの国立大学を併願して書類選考に通った大学を受験するケースが基本です。
複数の大学に書類選考で通った場合は、その中から1つ選び残りの大学は辞退しましょう。
併願の際は、それぞれの大学院に対する熱意や適応能力をアピールすることが重要です。
法科大学院の受験資格とは?修了までにかかる時間・最短ルートについても紹介
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今回は法科大学院の入試の内容や難易度、スケジュールについて解説してきました。
法科大学院入試は既修者コースか未修者コースかによっても異なるので、それぞれの対策が求められます。
またどちらのコースにも小論文があり、対策には添削を受けるのが効果的です。
アガルートの方か大学院入試向けのプログラムでは約1年間の学習期間を設け、難関法科大学院の入試に特化した内容で構成されているのでおすすめです。
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