通信制高校の歴史!様々な生徒をサポート 更新時間 2024.07.16
通信制高等学校とは、学校に通わず通信教育で学ぶ高校のことです。
以前はあまり馴染みのなかった学校でしたが、多様な学び方が人気を集め、2023年度の生徒数は26万4,974人に達しました。
これは高校生の12人に1人にあたり、減少を続ける全日制高校に反して増加の一途を辿っています。
不登校の生徒だけでなく、専門的な勉強をしたい子や自由な学び方をしたい子、趣味や活動に熱中したい多くの生徒たちに選ばれています。
そんな通信制高校はどのようにスタートし、どのように変化してきたのでしょうか?
この記事を通じて、通信制高校の変化や現状をお伝えし、あなたにとって最適な学びの選択肢を見つける手助けになれば幸いです。
通信制高校のこれまでの歴史
通信制高校がどのような理由で創設され、現代に至ったのかを解説します。
通信制高校は1948年に誕生した
通信制高校の歴史は、1948年に学校教育法が制定された際に始まりました。
この時、主に全日制に通えない青少年に教育の機会を提供する場として、定時制高校も誕生しました。
一方で、通信制高校は通学が難しい生徒に対して、通信教育を通じて高校教育を受ける機会を提供するために設立されたのが始まりです。
新しい2つの教育制度が確立され、多様な学びの形が実現されました。
以前は通信制高校で高卒資格を取れなかった
戦後すぐに設立された通信制高校ですが、当初は高校卒業の資格を取得することができませんでした。
その目的は、高校過程の教科・科目の一部を「通信による教育」で学習することだったからです。
現在のように、通信制高校で高卒資格を取得できるようになったのは、1955年のことです。
さらに、1961年には学校教育法の一部改正により、ようやく現在の通信制高校の基礎ができました。
通信制高校は4年制から3年制に
1961年当時、通信制高校の修業年限は4年以上とされていました。
この制度は、働きながら学ぶ人々にとって合理的なものでしたが、同級生と同じタイミングで大学受験ができないというデメリットがありました。
しかし、1988年に修業年限が4年制から3年制に変更されました。
これにより、通信制高校の生徒も全日制高校の生徒と同じペースで卒業し、進学や就職の機会を平等に得ることが可能になったのです。
本人の努力次第で同級生と同時に卒業できることは、多くの生徒にとって大きな安心となりました。
約20年で通信制高校が3倍以上に増加
通信制高校は、この20年間で大きく増加し、多様な学びの場として注目されています。
その背景には、生徒のニーズの多様化や教育の選択肢の拡大が挙げられます。
文部科学省のデータによると、2000年の通信制高校の数は、公立で67校、私立は17校しかありませんでした。
しかし、2020年には公立が78校、私立が179校と大幅に増加しています。
この増加は、生徒一人ひとりの状況に合わせた学びの選択肢が求められている現代社会において、通信制高校の重要性が高まっていることを示しています。
これにより、様々な事情で全日制高校に通えなかった生徒たちに、より多くの学びの場が提供されるようになりました。
参考:文部科学省 「高等学校通信教育の現状について」
https://www.mext.go.jp/content/20210226-mxt_koukou01-000013082_04.pdf今どうして通信制高校が注目されるのか?
通信制高校は、多様な学びのニーズに応える柔軟な教育システムが評価され、注目されています。
ここでは、その理由について詳しく説明します。
インターネットを活用した学習スタイル
通信制高校が注目される理由の一つは、インターネットを活用した学習スタイルです。
オンライン授業やデジタル教材を利用することで、時間や場所に縛られず、自分のペースで学習を進めることができます。
これにより、通学が難しい生徒や、個別の学習スタイルを求める生徒にとって、より適した学びの環境が提供されるようになりました。
また、インターネットを通じて全国の生徒と交流し、情報を共有することも可能です。
全日制に近い通学型の通信制高校
通信制高校の中には、全日制に近い通学型の学校も増えています。
通学型を選択することで、「友達ができにくい」「自学に孤独を感じる」といったデメリットを解消できるようになりました。
学校に通うことで規則正しい生活習慣を身につけたり、友人との交流を深めたりすることができます。
週に数回の登校日を設け、授業やクラブ活動、学校行事を通じて、全日制高校と同様の充実した学校生活を送ることが可能です。
このような通学型の通信制高校は、家庭の事情や体調などで全日制に通えない生徒にとって、魅力的な選択肢となっています。
サポート校による充実したフォロー体制
通信制高校では、サポート校による充実したフォロー体制も魅力の一つです。
サポート校では、学習の進捗状況を管理し、個別指導やカウンセリングを行うことで、生徒一人ひとりに適した支援を提供します。
「自学に自信がない」「自己管理が苦手」といった生徒でも、学習面はもちろん、精神面や生活面でのサポートも受けることができます。
特に進学や就職を目指す生徒にとって、このようなサポートは大きな助けとなり、安心して学びを続けることができるでしょう。
通信制高校を選ぶのはどんな生徒?
通信制高校には、多様な背景を持つ生徒が集まります。
ここでは、特に注目される3つのグループについて説明します。
不登校や引きこもりで全日制に通えない生徒
通信制高校は、不登校や引きこもりで全日制に通えない生徒にとって、重要な学びの場です。
こうした生徒たちは、通学の負担や人間関係のストレスを感じることが多く、通信制高校の柔軟な学習スタイルが適しています。
自宅でのオンライン授業や、少ない登校日で学ぶことができるため、自分のペースで学習を進めることができます。
個別の充実したサポートによって、徐々に学習への意欲を取り戻し、自信を持って次のステップに進むことができます。
芸能活動や趣味と学業を両立させたい生徒
通信制高校は、芸能活動や趣味と学業を両立させたい生徒にも人気があります。
忙しいスケジュールの中で、全日制高校に通うのは容易ではありません。
中には、出席日数が足りずに留年してしまう生徒もいるでしょう。
しかし、通信制高校ならば時間の自由が利きます。
オンライン授業や自主学習で時間を有効活用し、自分の興味や活動に集中することが可能です。
この柔軟な学び方が、夢を追いながら学業も疎かにしない、バランスの取れた学校生活を実現してくれます。
スポーツに打ち込みたいトップアスリートたち
フィギュアスケートの紀平梨花選手や川畑和愛選手、サッカーの香川真司選手や柿谷曜一朗選手も、通信制高校の卒業生です。
トレーニングや試合で忙しい日々を送るアスリートにとって、通学時間を節約できる通信制高校は大きなメリットです。
一方で、全日制高校の場合は練習時間を確保するのも難しく、アスリートとして伸び盛りの時期に十分な練習が行えません。
>通信制高校であれば個々のスケジュールに合わせて学習計画を立てることができ、競技と学業を両立することが可能になります。
通信制高校を卒業するための要件
通信制高校を卒業するためには、特定の要件を満たす必要があります。
ここでは、その具体的な要件について詳しく説明します。
3つの卒業要件とは?
通信制高校を卒業するためには、次の3つの要件を満たす必要があります。
まず、「3年以上の在籍期間」が必要です。
次に、「最低74単位の取得」が求められます。
最後に、「特別活動に30時間以上参加すること」が条件となります。
この特別活動には、スクーリングと呼ばれる面接指導などが含まれます。
つまり、通信制高校であっても、全く学校に行かずに卒業することはできません。
単位を取得する方法
通信制高校では、オンライン授業や課題提出を通じて単位を取得することが可能です。
特別活動の時間として、スクーリングの代わりにインターネット授業を利用することも増えています。
学校ごとに特別活動の扱いが異なるため、詳細を確認したい場合は直接問い合わせることをお勧めします。
在籍期間や取得した単位の引き継ぎも可能
全日制高校や定時制高校に在籍していた場合、その在籍期間や取得した単位を引き継ぐことができます。
さらに、英検などの各種検定が単位として認められる場合もあります。
このように、以前の学習成果を活かして卒業に必要な単位を補完することができるため、必ず学校に相談するようにしてください。
そうすることで、効率的に卒業要件を満たすことが可能になります。
通信制高校を選ぶメリット
通信制高校には、柔軟な学習スタイルや個別対応など、多くのメリットがあります。
ここでは、通信制高校を選ぶ具体的なメリットについて説明します。
柔軟な学習スケジュール
通信制高校では、学習スケジュールを自分のライフスタイルに合わせて調整することができます。
これは、アルバイトや家庭の事情、趣味やスポーツなど、個々の状況に応じた学習が可能になるためです。
自宅での学習が中心となるため、通学時間を節約できる点も大きな魅力です。
登下校が不要になることで、生徒は時間を有効に使い、学業と他の活動を両立させやすくなります。
多様なカリキュラム
通信制高校では、多様なカリキュラムが用意されています。
生徒一人ひとりの興味や進路に応じた科目を選択できるため、より専門的な学びを深めることが可能です。
例えば、美容を学びたい生徒の場合、メイクや美容師の知識やテクニックを学びつつ、高校卒業に必要な学習も並行して学びます。
自分の好きなことを学ぶことで、学習意欲や将来へのモチベーションを上げることができます。
また、進路指導やキャリア教育にも力を入れている学校が年々増えています。
国内の大学はもちろん、海外大学への留学や進学など、将来の選択肢を広げるサポートが受けられます。
個別対応の学習サポート
通信制高校では、個別対応の学習サポートが充実しています。
生徒の学習進捗に応じた個別指導やカウンセリングを行い、必要に応じてサポートを提供します。
心理カウンセラーや社会福祉士が常駐している学校もあり、引きこもり支援や精神的なフォローもあって安心です。
また中学で不登校だった生徒でも、弱点を集中的に克服しながら、学習の遅れを取り戻すことができます。
教師とのコミュニケーションが密に取れるため、親御さんも安心してお子さんを任せられるでしょう。
全国どこでも学べる環境
通信制高校は自宅での学習が基本ですので、場所を問わず入学できるのがメリットです。
インターネットを利用したオンライン授業や学習サポートにより、地理的な制約を受けずに学習を進めることができます。
これにより、地方や海外に住んでいる生徒でも、質の高い教育を受けることが可能です。
また、引っ越しや転校の際にも、学習を中断することなく続けることができるため、安心して学び続けることができます。
通信制高校を選ぶデメリット
通信制高校には多くのメリットがありますが、選ぶ際にはデメリットも理解しておくことが重要です。
ここでは、通信制高校のデメリットについて詳しく説明します。
自己管理能力が求められる
通信制高校では、自分で学習スケジュールを立てて勉強を進める必要があります。
そのため、自己管理能力が必要です。
計画的に学習を進められない場合、課題の遅延や単位取得が困難になるかもしれません。
全日制高校のように毎日授業があるわけではないため、自分でモチベーションを維持し、計画的に学ぶ姿勢が重要です。
この点は、特に自己管理が苦手な生徒にとっては大きな課題となるでしょう。
社会性の育成が難しい場合がある
毎日学校に行く必要がない通信制高校の場合、全日制高校と比べて同年代の生徒との交流が少なくなることがあります。
そのため、友人関係を築く機会が減り、社会性を育む環境が限られてしまうかもしれません。
特に、学校行事やクラブ活動などの経験を通じて得られるコミュニケーションスキルの育成が難しくなることが懸念されます。
したがって、積極的にクラブ活動に参加したり、通学コースを選択したりといった工夫が必要です。
進学や就職のサポートに差がある
通信制高校では、学校によって進学や就職のサポート体制に差があります。
全日制高校と比較して、進路指導やキャリアカウンセリングの機会が少ない学校もあるようです。
そのため、進学や就職を目指す際には、各学校の進学実績や就職実績などの情報収集を行いましょう。
また、出来るだけ多くの学校説明会などに出向き、学校の空気感や雰囲気を感じることも大切です。
選択肢が豊富な通信制高校で、主体的な学びを深めよう!
通信制高校の歴史や、今注目を集めている理由について解説しました。
柔軟な学習スタイルと多様なカリキュラムで、生徒一人ひとりに合った教育を提供できるのが大きな魅力です。
自己管理能力の向上や個別対応の学習サポート、全国どこでも学べる環境など、通信制高校には多くのメリットがあります。
一方で、自己管理の難しさや社会性の育成、進学や就職のサポートにおける課題も存在します。
しかし、これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、通信制高校での学びは大きな成果をもたらすでしょう。
選択肢が豊富な通信制高校で、主体的に学びを深め、未来への道を切り拓いていきましょう。



