社会福祉士は、「ソーシャルワーカー」とも呼ばれており、高齢者から子育てまで幅広い分野において、福祉のサービスを必要とする方や、生活上さまざまな困難を抱える方々を支援するプロフェッショナルです。
しかしなかには、「給料が安いのでは」「資格を取っても需要がないのでは」といった声も聞こえてきます。
社会福祉士の平均年収は403万円といわれており、ほかの医療・福祉系の資格よりもやや高い水準となっています。
そこで今回は、社会福祉士について関心がある方向けに、気になる年収を男女別・職種別などさまざまな方向から比較していきます。
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社会福祉士の平均年収は400万円程度
令和2年度に社会福祉振興・試験センターが実施した調査によると、社会福祉士の平均年収は403万円となっています。
また男女別では男性が473万円、女性が365万円であることが示されています。
平均年収403万円には正社員だけでなく、契約社員やパートタイム職員、派遣職員も含まれており、正規職員に限ると約49%がこの平均を上回る年収を得ているとのことです。
ちなみに、平成27年度の同様の調査では社会福祉士の平均年収は377万円であり、この5年間で25万円以上の増加が見られました。
社会福祉士の需要が高まっていたことにより、待遇が改善されていると考えられます。
福祉系の職種の中では年収が高め
職種 | 全体の平均年収 | 男性の平均年収 | 女性の平均年収 |
---|---|---|---|
社会福祉士 | 403 | 473 | 365 |
介護福祉士 | 292 | 373 | 269 |
精神保健福祉士 | 404 | 463 | 377 |
上記からはあくまで平均年収で比較すると精神保健福祉士→社会福祉士→介護福祉士の順で年収が高いことがわかります。
精神保健福祉士と社会福祉士はほとんど変わらないと言えるでしょう。
介護福祉士は正規雇用が少なく、派遣やパートタイムでの雇用が一般的な職業であることから、正社員として働くことが多い社会福祉士の方が平均年収が高くなります。
また、精神保健福祉士は精神障害を持つ方への訓練や支援を行うため、医療機関での需要が高い職種です。
医療機関で働くことで収入が増える傾向があり、社会福祉士と同等の年収を得ることができます。
さらに、働き方によっては日勤のみの社会福祉士と夜勤を行うなどすると、介護福祉士の方が高年収になるケースもあります。
職種・職位・施設によっても異なる
社会福祉士といっても、職種や職位によって平均年収に差が生まれることがあります。
社会福祉士のなかでも平均年収が高い順に並べると以下の通りとなります。
職種・職位 | 平均年収 |
---|---|
経営者 | 549 |
施設長等 事務所管理者 | 554 |
主任・相談部門の長 | 495 |
介護支援専門員 | 362 |
地域包括支援センターの社会福祉士 | 376 |
障害者相談支援専門員 | 376 |
児童自立支援専門員 | 410 |
医療ソーシャルワーカー | 384 |
スクールソーシャルワーカー | 292 |
相談員 | 354 |
指導員 | 346 |
介護職員 | 303 |
支援員 | 334 |
事務職員 | 438 |
その他 | 390 |
上記の表からも分かるように、経営者や施設長、主任などの職員を管理する側の平均年収は500万円前後と高い傾向にあります。
一方介護業界や教育関連の職場はそもそも非正規職員で働く人が多い業界であることから、他の職種よりも収入の低い傾向が見られます。
また施設・事業所など働く場所によっても平均年収が異なります。
施設・事業所 | 平均年収 |
---|---|
保護観察所・地方更生保護委員会 | 638 |
児童相談所 | 532 |
身体障害者更生相談所 | 504 |
小学校・中学校 | 268 |
高等学校 | 288 |
その他の学校教育機関 | 332 |
保護観察所・地方更生保護委員会は法務省が管轄しており、非行や犯罪を予防する業務につくこともあり専門的な知識が求められるため、年収が高い傾向にあります。
一方で、小中学校などの教育機関で就業する場合は週5日で常勤するケースが少なく、非常勤で週2〜3日勤務する形態が多いため比較的年収が低いといえます。
社会福祉士の年収が高い理由
ここでは、社会福祉士の年収が高い理由について紹介します。
理由➀社会福祉士の需要は高い
社会福祉士は高齢者や障害者のための福祉施設やサービス機関で働いています。
高齢者や障害者への社会的支援は常に必要とされており、超高齢社会に突入した日本では、支援を求める人々が年々増えてきているのが現状です。
社会福祉士は支援を必要とする方々からの相談に応じ、適切な支援やサービスに結びつける仕事のため、今後も活動の場が広がると考えられます。
ほかにも、子どもの虐待やいじめ、生活困窮者や失業者、DV被害者など、社会的に弱い立場にある人々の問題解決においても、社会福祉士は重要な役割を果たします。
以上のことから社会福祉士は現在も将来にわたって社会に必要とされる資格であり、雇用の安定や給与面での安定が期待されます。
理由➁資格手当がつくケースが多い
社会福祉士の年収や給与が高い理由の一つは、資格手当の存在が挙げられます。
福祉制度に精通し、適切な相談援助を提供できる社会福祉士は、福祉業界において重要な役割を果たしています。
勤務先によっては資格手当が支給されることがあります。
社会福祉士の資格手当の平均は約1万円ですが、勤務先によっては2万円や3万円以上の手当を受け取ることもあり、平均年収を上げている要因の一つとなっています。
社会福祉士として年収を上げる方法5つ
ここでは、社会福祉士として給料アップさせる方法について紹介します。
方法➀資格・役職手当をもらう
施設によっては社会福祉士に対して資格手当が支給されることがあります。
多くの施設ではその額は約1万円程度ですが、中には2万円から3万円の手当を支給するところもあるといわれています。
令和2年度の社会福祉士就労状況調査によれば、資格手当を支給している施設は37.4%であり、決して多いとは言えませんが、手当の存在は社会福祉士としての働く意欲を高める要因となります。
現在の職場で手当が支給されない、または給与に不満がある場合、高額な資格手当を提供する施設に転職することで年収を上げることが出来るでしょう。
ただし資格手当だけでなく、基本給や賞与などのさまざまな条件を十分に確認し、総合的に年収が向上するかどうかを見ておくことをおすすめします。
方法➁成年後見人を引き受ける
成年後見人とは判断能力が不十分な高齢者や障害者を保護し、家庭裁判所の監督のもとで金銭管理や身上監護を行う専門職のことです。
成年後見人になることでよりできる仕事の幅も広がり、アピールポイントになるでしょう。
成年後見人になるための特定の資格は求められませんが、一般的には弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家が選ばれることが多いです。
社会福祉士が成年後見人に選任されるためには日本社会福祉士会への登録や基礎研修、成年後見人養成研修の受講が必要です。
現在の職務に加え、より多様な業務を担当し、収入を増やすことができるでしょう。
方法➂ダブルライセンスを取得する
社会福祉士は無資格者でも自治体や職場、業務内容によっては従事できる場合がありますが、資格を取得することで職務の幅が広がり、資格手当が支給されることもあります。
職種や職位によって給与は大きく異なり、経営者や管理職などのマネジメントスキルが求められる立場では、収入が増加することが期待されます。
例えば、児童関連の職種では「保育士」、高齢者施設では「介護福祉士」といった関連資格があると重宝されるでしょう。
専門性が向上することでキャリアアップや転職活動にも有利になる可能性が高まります。
なかでも特に「社会福祉士」と「精神保健福祉士」のダブルライセンスの取得がおすすめです。
精神保健福祉士は、精神障がい者への支援を行う国家資格であり、社会福祉士や介護福祉士と共に、福祉の三大国家資格と称されることがあります。
上記の資格を取得することで、幅広い利用者への対応が可能となり、転職先の選択肢も増えるでしょう。
方法④独立・開業する
社会福祉士の職業形態には、企業に所属する方法だけでなく、独立して自ら事務所を設立するのもひとつです。
しかし、独立している社会福祉士の数が少ないため、その場合の給与に関する具体的なデータが足りないのが現状です。
それでも、社会福祉士に対する社会的な需要は高く、少子高齢化の進展に伴い、今後さらにその需要が増加することが予想されています。
したがって現場での経験を積み、独立することで企業に勤務するよりも高い年収を得る可能性があると言えるでしょう。
方法⑤待遇の良い職場に転職する
もし現状で給料アップが見込めないのであれば、年収が高い施設への転職を検討することもおすすめです。
同じ職場で昇進を目指すこともできるでしょうが、短期間で年収を大幅に増加させるのは難しく思うようにならないこともあります。
しかし転職を行うことで、同じスペックでも選択や交渉次第で年収を大きく引き上げることが期待できます。
とくに資格手当が支給される施設や、高年収の業界を選ぶことで、年収の向上が実現できるでしょう。
社会福祉士は、福祉関連の資格の中でも特に評価されることが多く、転職先の選択肢も豊富です。
専門的な転職エージェントを利用することで職場環境なども把握できるでしょう。
社会福祉士の給料事情は?社会福祉士になるための勉強方法もご紹介
社会福祉士とは
社会福祉士は、社会福祉業務に携わる専門職の国家資格であり、「社会福祉士及び介護福祉士法」で位置づけられています。
社会福祉士資格は「名称独占」であるため、資格を持っている人だけが「社会福祉士」を名乗れます。
福祉や介護・医療に関する相談援助に必要な専門知識やスキルを持つ者として、平成31年現在では245,181人の社会福祉士が登録されており、福祉の幅広い分野で活躍しています。
「社会福祉士及び介護福祉士法」によると、社会福祉士とは以下のように記載されています。
専門的知識及び技術をもって、身体上もしくは精神上の障害があること、または環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連携及び調整その他の援助を行うことを業とする者
仕事内容
具体的な仕事の内容としては、身体及び精神に障害のある方、生活困窮者、ひとり親の家庭など、心身や環境上の理由によって日常生活を送るのに支障がある方々を対象に、様々な相談に対応したり、必要な援助を提供する仕事です。
社会福祉士の支援の対象者は、高齢者から子供まで幅広く、その分だけ活躍の場も多くなっています。
特に近年では、少子化・高齢化や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により家庭で過ごす時間が増えたこともあり、児童虐待、高齢者虐待の増加などが、解決困難な社会問題として報道されるようになっています。
こうした問題に対応する行政機関や、各自治体にある社会福祉協議会あるいは様々な民間の福祉関係の支援団体などでは、社会福祉士が必要とされています。
ソーシャルワーカーは独学でもなれる?学校や費用についてご紹介
社会福祉士になるには
厚生労働大臣の指定試験機関である「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」が運営する「社会福祉士資格試験」で合格する必要があります。
試験時間は240分で、5肢択一形式を基本に、18科目群という幅広い分野の中から、合計150問が出題されます。
受験資格は法律で定められており、学歴や実務経験などによって受験資格が違います。
福祉系大学を卒業した方と、一般大学を卒業した方では取得方法が違いますし、相談支援機関での支援実務経験や、専門の社会福祉士養成機関に入学する必要がある場合もあります。
詳細は、社会福祉振興・試験センターの公式ホームページの「受験資格(資格取得ルート図)をご覧ください。
社会福祉士試験の合格率・難易度は?合格するためのポイントも解説
社会福祉士の平均年収や他業種との比較まとめ
社会福祉士は、ますます需要が高まる福祉のプロフェッショナルです。
行政機関のほか、民間の介護福祉関係の事業所などで、多くの社会福祉士が活躍していますが、まだまだ人材が足りないとさえ言われています。
一般的な給与所得者と比較すると多少給料は少ない傾向にありますが、同レベルの給料はもらえますし、長く勤めてキャリアを重ねると給料アップも期待できます。
将来性のある資格ですので、人とのコミュニケーションが好きで、福祉の世界で活躍したいとお考えのある方は、ぜひ挑戦してみてください。
- 令和5年度の合格率81.25%!
- 新カリキュラムの試験に対応した講義を展開
- 図やイラストを用いた視覚的学習テキストを採用