就活生にとっても新社会人にとっても、自分が志望している、或いは勤めている企業の給料が高いのか低いのか、一般的な新卒はどれくらい給料をもらっているのかは、どうしても気になるところですよね。
この記事では、新卒の年収の平均額がどれくらいかを、厚生労働省の統計データをもとに最終学歴や性別ごとにご紹介します。
また、平均年収額が高い都道府県ランキングや、給料をチェックする際の注意事項、手取り額の算出方法なども合わせて解説していきます。
この記事を参考にして、自分が受け取る給料についてしっかり把握しておきましょう。
新卒の平均年収
まずはじめに、新卒(新規学卒者)の初年度の平均年収を見ていきましょう。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査にて「新規学卒者の賃金」(月額)が公表されているため、ここではその金額を12倍(12カ月分)することで平均年収を算出しています。
企業によってはこの年収額にボーナス(賞与)が加算され、より金額が高くなる可能性があります。
学歴・男女別
厚生労働省が発表した令和2年賃金構造基本統計調査によると、学歴別および男女別に見た新卒の賃金は以下の表の通りとなります。
令和2年 新卒年収(年収=「新規学卒者の賃金」×12)
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
大学院 | 約307万円 (月約25.6万円) |
約305万円 (月約25.4万円) |
約312万円 (月約26万円) |
大学 | 約271万円 (月約22.6万円) |
約273万円 (月約22.7万円) |
約270万円 (月約22.5万円) |
高専・短大 | 約242万円 (月約20.2万円) |
約254万円 (月約21.2万円) |
約239万円 (月約19.9万円) |
専門学校 | 約250万円 (月約20.8万円) |
約244万円 (月約20.3万円) |
約254万円 (月約21.2万円) |
高校 | 約213万円 (月約17.8万円) |
約215万円 (月約18万円) |
約210万円 (月約17.5万円) |
上の表から分かる通り、基本的には学歴が上がるにつれ収入も高くなる傾向にあります。
性別による収入差は目立たず、月給では数千円から1万円ほど異なる程度です。
男女で最も差が開いたのが高専・短大卒で、その差は年収に換算すると約15万円でした。
なお令和2年とは調査方法や定義が異なるため純粋に比較はできませんが、参考までに、令和元年の賃金構造基本統計調査による新卒の賃金も以下にまとめます。
令和元年 新卒年収(年収=「初任給額」×12)
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
大学院 | 約287万円 (月約23.9万円) |
約287万円 (月約23.9万円) |
約286万円 (月約23.8万円) |
大学 | 約252万円 (月約21万円) |
約255万円 (月約21.3万円) |
約248万円 (月約20.7万円) |
高専・短大 | 約221万円 (月約18.4万円) |
約222万円 (月約18.5万円) |
約220万円 (月約18.3万円) |
高校 | 約201万円 (月約16.7万円) |
約203万円 (月約16.9万円) |
約198万円 (月約16.5万円) |
全体的に令和元年よりも令和2年の方が賃金の額が上がっています。
また、こちらでも男女の賃金差は大きくなく、月給の差は1万円以下に収まっています。
最も男女差が大きいのは大学卒で、年収で見ると約7万円の差です。
いずれの年も、新卒時点では男性と女性の賃金にさほどの差はなく、それよりも最終学歴の方が金額に大きな影響を与えていることが分かります。
都道府県別
新卒の年収は、就職する地域によっても大きく異なります。
ここでは、先ほどと同様令和2年賃金構造基本統計調査のうち「一般労働者 都道府県別」のデータを利用し、新卒の年収額が高い都道府県トップ3をそれぞれ全学歴(高校、専門学校、高専・短大、大学、大学院)、大学卒、大学院卒に分けてご紹介します。
まず全学歴における都道府県別年収額の上位3位です。
- 1位:東京都 約272万円
- 2位:神奈川県 約270万円
- 3位:千葉県 約268万円
続いて、大学卒の年収額ランキングです。
- 1位:埼玉県 約287万円
- 2位:千葉県 約286万円
- 3位:神奈川県 約278万円
最後に、大学院卒のランキングです。
- 1位:宮城県 約357万円
- 2位:山梨県 約350万円
- 3位:北海道 約339万円
全学歴および大学卒のランキングではトップ3を首都圏が占めていますが、一方、大学院卒となると状況が全く変わってきます。
大学院卒の場合、4位以下は広島、熊本、茨城と続き、東京都は7位で約317万円でした。
1位の宮城県と47位の青森県では、年収額におよそ98万円の開きがあります。
大学卒の場合、4位岐阜県、5位茨城県、6位三重県と続き、7位の東京都は約276万円です。
1位の埼玉県と47位の沖縄県には、年収額に約64万円の差が出ました。
全学歴で見ると、4位以下は埼玉県、大阪府、京都府、愛知県と続き、比較的大きな都市のある都道府県の年収額が高くなっているという印象を受けます。
1位の東京都と47位の秋田県の年収差は約58万円です。
このように、最終学歴も就職する都道府県も、相互に影響して新卒の年収額を大きく左右することが分かります。
給料を見る際に気を付けたいこと
新卒の平均的な年収額が分かったところで、ここからは、就活生や新入社員が自身の収入を正しく把握するために気を付けなくてはならないポイントをご紹介します。
初任給・月給≠基本給
「初任給」「月給」「基本給」はどれもひと月あたりに支給される給与を意味する単語だと思われがちですが、基本的に、初任給や月給と基本給はその意味が異なります。
基本給は、各種手当を除いた、毎月必ず支払われる最低限の金額を意味する言葉です。
時間外手当(残業代)やボーナス、退職金などは、この基本給の金額をもとに算出されるケースが多く、基本給が高ければ高いほどこれらの支給額も高くなります。
一方、初任給や月給は、多くの場合月ごとの総支給額の意味合いで使われます。
基本給に、時間外手当や通勤手当、家族手当、住宅手当、資格手当などを加えた総額です。
月給が高くとも基本給が非常に低く、諸々の手当てで総額が上がっているような場合、残業時の時間単価が安くボーナスの算定基礎額も低くなるため、結果的に思ったより年収が少なかった、ということが起こりえます。
就職希望先の給与を比較する際は、初任給や月給だけでなく、基本給にも着目することが大切です。
額面(総支給額)と手取り額は違う
基本的に、求人情報に記載のある初任給や月給は、「額面」給与、すなわち「総支給額」を意味します。
総支給額とは企業が従業員に支払う給与の総額です。
給与から天引きされるべき税金や社会保険料が引かれる前の金額ですので、実際に従業員が受け取れる金額とは異なります。
一方、「手取り」とは、上の総支給額から税金や社会保険料などの各種控除額を差し引いた後の支給額であり、従業員が実際に受け取る金額を意味します。
そのため、額面よりも手取りの方が金額が少なくなります。
額面給与をそのまま手元に入る額だと勘違いしてしまうと、月々の資金計画に狂いが生じますので要注意です。
初任給とその翌月の手取り額は違う
もし就職先で初任給が満額支給される場合、その翌月の手取り額は初任給の手取り額より少なくなります。
額面給与から天引きされる税金や社会保険料のうち、健康保険料と厚生年金保険料は翌月控除としてる企業が多いためです。
初任給、つまり4月分の給与からはこれらの保険料が差し引かれず、5月分の給与から引かれるようになるため、5月分の手取り額が4月分の手取り額より少なくなります。
しかしこの5月分の手取り額こそが本来の手取り額ですので、初任給の手取り額の高さに浮かれてしまわないよう注意しましょう。
ただし、給料の締め日の関係で初任給が満額支給とならない場合は、翌月の5月分から社会保険料の控除額が増える一方で給与の支給額も増えるため、この限りではありません。
2年目からは住民税が増える
額面給与から差し引かれる税金や社会保険料のうち、住民税は、前年1月から12月までの給与所得を元にその金額が算定されます。
つまり、前年の収入が規定額以下の場合は、その年の住民税がかからないのです。
基本的に、新卒入社した年の前年の収入はアルバイト程度でこの規定額を上回らない、という人がほとんどかと思います。
そのため、社会人1年目の給与からは住民税は引かれず、翌年、2年目の6月から差し引かれるようになります。
これにより、社会人2年目になり基本給や手当が増えたはずなのに手取りが増えていない……とがっかりするケースも見受けられます。
手取り額の計算方法
実際に手元に入る手取り額がいくらなのかは、給与明細を見れば一目瞭然です。
とは言え就職前や給料日前に大まかにでも金額を把握しておきたい人も多いかと思います。
ここからは、実際の手取り額の計算方法を、具体例を交えてご紹介します。
概算額
ひとまず大まかな額が知りたいということであれば、手取り額=額面給与のおよそ80%と考えてください。
額面給与が20万円の場合は、手取り額はおよそ16万円程度となります。
もっとも、実際に額面給与から差し引かれる額は、人によってそれぞれ異なります。
こちらはあくまで概算額の計算方法であり、より詳細な計算方法は次でご紹介します。
手取り額の計算方法
総支給額から税金・社会保険料を引くことで、手取り額を算出することができます。
総支給額から引かれる項目は以下の通りです。
- 社会保険料
- 健康保険料:保険料率は、加入している組合および「標準報酬月額」による
- 厚生年金保険料:保険料率は「標準報酬月額」による
- 雇用保険料:一部業種を除き給与の0.3%
- 介護保険料:加入している健康保険組合による。40歳未満はなし
- 税金
- 所得税:月給から社会保険料を引いた金額を月額表に当てはめて決定
- 住民税:前年の収入額から算出。6月ごろ「住民税課税決定通知書」により金額が通知される
出典:転職Hacks
ただし、これら控除される税金や社会保険料の具体的な金額は、従業員の年齢、勤続年数、前年の収入額、扶養人数、加入している健康保険組合などにより変動します。
具体例として、23歳で新卒入社1年目、扶養人数0、東京勤務、協会けんぽ加入、月給20万円、前年収入0円のケースで、手取り額を計算してみます。
この場合、各控除額は以下の通りとなります。
- 社会保険料:計28,740円
- 税金:計3,770円
- 所得税:3,770円(参照:国税庁 令和3年源泉徴収税額表)
- 住民税:前年収入0のため非課税
- 控除額計:社会保険料計28,740円+税金計3,770円=32,510円
これにより、手取り額は200,000円-32,510円=167,490円となります。
このケースでの手取り額は額面の約83.7%です。
2年目の6月以降はさらに住民税が引かれ、手取り額が変わります。
これはあくまで一例ですので、自分の具体的な手取り額を知りたい場合は、加入している健康保険組合のホームページなどを参照し、それぞれ保険料率を調べてみてください。
まとめ新卒の手取りや最終学歴ごとの収入差まとめ
以上、新卒の平均年収や、手取りについての注意点などをご紹介しました。
新卒の年収の平均は大学卒で約271万円ですが、最終学歴や勤務地により年収額に大きな差が見られます。
手取り額は、額面給与から各種税金および社会保険料を引くことで算出できます。
具体的な控除額は加入している健康保険組合や従業員各々の条件により異なりますので注意が必要です。
大まかな額を把握したいのであれば、額面給与の80%程度と考えてください。
給料についての理解を深めて、企業選びや自分の収入の把握に役立てましょう。