男女雇用機会均等法の制定により職業間の性差別がなくなりつつある現在では、男性の保育士は珍しくありません。
女性が多く活躍する現場で、男性が保育士になるにあたりお給料面や将来性など不安に思うことは多いですよね。
今回は、保育士の男女比、男性保育士の年収・給与などの待遇面や将来性について解説します。
併せて男性保育士が年収・給料を上げる方法についても解説していきます。
男性保育士の実情
男女雇用機会均等法の制定を機に職業での性差別が解消されるようになり、男性でも保育士を志す方が増えてきました。
昔と比べると見かけるようになった男性保育士ですが、実際の事情はどうなっているのでしょうか。
まずは、保育士の登録者数、平均年齢、勤続年数の男女比をそれぞれ確認していきます。
保育士登録者数の男女比
男 | 女 | 計 | |
---|---|---|---|
令和2年 | 約82,000人 | 約158万人 | 約166万人 |
平成31年 | 約78,000人 | 約152万人 | 約160万人 |
平成30年 | 約74,000人 | 約150万人 | 約153万人 |
平成29年 | 約69,000人 | 約139万人 | 約146万人 |
平成28年 | 約64,000人 | 約132万人 | 約138万人 |
平成27年 | 約59,000人 | 約125万人 | 約131万人 |
平成26年 | 約54,000人 | 約119万人 | 約124万人 |
厚生労働省による保育士登録者数のデータを見ると、令和2年度の全体の登録者数は約1,666,000人になり、男性が約82,000人に対して女性は約1,583,000人となっています。
男性の登録者数の比率は全体の5%に満たない計算になります。
男性保育士の数は年々増えてはいますが、女性保育士も毎年何万人も増えているため、保育士の男女比にあまり変化はありません。
保育士の平均年齢・勤続年数を男女で比較
厚生労働省が発表した「保育士の男女別の平均年齢と勤続年数」のデータによると、男性保育士の平均年齢が31.9歳で、女性保育士の平均年齢は37.0歳となっています。
また、勤続年数は男性保育士の方が6.2年、女性保育士の方は7.9年と、男性保育士は女性と比べて早期に退職していることがわかりました。
このような調査結果から、男性保育士にとって長く勤務しやすい環境が整っているとはまだ言えないかもしれません。
男性保育士の平均年収・給料水準
男性保育士として勤務する上で気になるのが給与面ですが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和元年度)によると保育士の平均年齢と平均年収は以下のようになっています。
平均年齢 | 平均年収 | 平均月収 | |
---|---|---|---|
男性 | 31.9歳 | 389.2万円 | 32.4万円 |
女性 | 37.0歳 | 362.1万円 | 30.2万円 |
合計 | 36.7歳 | 363万円 | 30.3万円 |
平均給与で見ると男性保育士の平均月収は32.4万円、女性保育士は30.2万円となっており、男性の方が女性よりも給与面では上回っていることがわかります。
元々男性保育士の数が女性よりも少ないことや、女性保育士よりも男性の方が高い役職に就きやすい点などが考慮されていると考えられます。
しかし、これはあくまで保育士だけで比較したものであり、男性保育士の給料水準は他業種の男性と比べると決して高いものではありません。
全職種との平均年収の比較
保育士と全職種の平均年収を男女別で比較してみます。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
全業種 | 約561万円 | 約388万円 |
保育士 | 約389万円 | 約362万円 |
全職種で見ても保育士は平均年収が低いことが分かり、特に男性の平均年収では全職種と保育士では100万円以上の開きがあります。
職種全体で考えても、平均年収や給与水準の低さが男性保育士の増加率が上がらない原因と言ってもいいでしょう。
とはいえ、詳細は後述しますが男性保育士の需要は高まっており、男性保育士が増加すれば労働環境や待遇などが見直されて給料が上がるかもしれません。
男性保育士が年収・給料を上げる方法
給料が安いと言われていた保育士も待遇が改善され給料が上がる見込みがあるのは確かですが、保育士として勤務しながら少しでも給料を上げたいと考えている方もいるでしょう。
働き方を工夫したりスキルアップしたりすることで、年収や給料を上げられる方法がいくつかあります。
以下から男性保育士が年収・給料を上げる方法をいくつか紹介していきます。
- 保育士以外の資格を取得する
- 国から手当てをもらう
- 勤務体系を選ぶ
- 公立の保育士になる
- 管理職を目指す
男性保育士が年収を上げる方法①保育士以外の資格を取得する
幼稚園や一部の保育園などでは、体を動かすことに力を入れています。
幼児体育指導員やスポーツインストラクターの資格を取れば、保育園に入職する際に優遇される可能性もあるでしょう。
また、通園バスでの置き去り事故などの幼児の死亡事故が問題視されていることもあり、保育士がより密接に園児と関わり、安全を管理することが求められています。
そのため、通園バスを運転できる免許を持っていれば、重宝されるかもしれません。
男性保育士が年収を上げる方法②キャリアアップ研修を受ける
保育士は以前まで他業種よりもキャリアアップの道筋が整備されておらず、低賃金の原因とされてきました。
しかし、これまでの保育士の待遇が見直され、平成29年に厚生労働省がキャリアアップ研修を制定し、副主任保育士・専門リーダー・職務分野別専門リーダーなどの新たな役職が設けられました。
必要な経験年数を満たしうえでキャリアアップ研修を受けることでこれらの役職に就け、処遇改善加算Ⅱという手当が国から貰えます。
ただし、「条件を満たしていても役職に就けない」「役職に就いたからといって必ず加算手当が支給されるとは限らない」という点に注意が必要です。
男性保育士が年収を上げる方法③夜勤勤務体系を選ぶ
延長保育や夜勤のある保育園の場合、人手が足りていないこともあり、夜勤手当が高めに設定されているところが多いです。
また、関東や関西の主要都市は他の地域の保育園と比較すると給料が高く、共働きの保護者も多いため夜勤などにも対応できる保育士を募集していることが多い傾向にあります。
男性保育士だけの特権という訳ではありませんが、不規則な勤務時間にも対応できるようであれば給与アップをより狙えるでしょう。
男性保育士が年収を上げる方法④公立の保育士になる
保育園には私立や認可など様々な形態がありますが、公立保育園に勤務すると地方公務員という扱いになります。
昇給制度がきちんと設けられているため、私立保育園に勤務するよりも公務員保育士の方が高い年収が期待できるでしょう。
ただし、公立の保育士になるためには保育士資格の取得だけでなく公務員採用試験に合格する必要がありますが、毎年募集しているわけではありません。
勤務地も保育園に限らず児童館や福祉施設に配属される可能性もあるため、その点は注意が必要です。
男性保育士が年収を上げる方法⑤管理職を目指す
園長や主任保育士、副主任などの管理職に就けば役職手当を貰うことができます。
普段から周りを常に気にかけるようにし、率先して動くなどすれば次第に園での重要な仕事を任されるようになるかもしれません。
管理職を目指すのは、保育士という仕事に就きながら年収を上げるには最短ルートになり得るでしょう。
男性保育士のメリット・デメリット
男性保育士はまだまだ珍しく就くことに不安を覚えるかもしれませんが、女性保育士にはない男性保育士ならではのメリットが数多くあります。
女性保育士の場合は身体能力的に難しいこともありますが、男性保育士はそういった女性ができないことを上手くカバーすることができます。
一方で女性ばかりの職場で起きる不都合など、男性保育士にはいくつかデメリットも存在します。
ここから男性保育士のメリットを4つ、デメリットを3つ紹介していきます。
男性保育士のメリット
男性の保育士が園に在籍するメリットは以下の通りです。
- 体力のいる遊びができる
- 男児のトイレを手伝える
- 同性の保護者の相談に対応できる
- 力仕事や防犯・防災面で役立てる
メリット①体力のいる遊びができる
保育士はとても体力を必要とする仕事です。
園児の成長を見守りながらレクリエーションにも参加し、お世話をしながら一緒に楽しまなければいけません。
しかし、男性と女性では体力に差があり、活発な男児を相手にすると女性ではなかなか体力がついていかないこともあります。
男性保育士がいればボール遊びなどの動きが激しいレクリエーションにも参加できるので、体力が必要になる場面では特に重宝される存在となるでしょう。
メリット②男児のトイレを手伝える
保育園では排泄のサポートも保育士の仕事ですが、男児の場合は同性の保育士がいることでスムーズに対応できます。
また、遠足などの外出時に女性保育士は男子トイレに入りにくいため、男性保育士の存在はとても頼りになるでしょう。
メリット③同性の保護者の相談に対応できる
最近は積極的に育児に参加する男性も増えており、父親が保育園の送迎をすることも珍しくありません。
保育士に相談したいことでも相手が異性だと、周囲の目を気にして話しづらいという方もいるでしょう。
しかし、男性保育士がいれば男性の保護者も話しかけやすく、子どものことを気兼ねなく相談できる相手になれるでしょう。
メリット④仕事や防犯・防災面で役立てる
園庭の整備や各行事の準備など、意外と重い物を運ぶ機会の多い保育園では男性の存在はとても頼りになります。
力仕事を任せられるだけでなく、不審者の対応など防犯・防災面でも頼りにされるでしょう。
男性保育士のデメリット
男性の保育士が園に在籍するデメリットや懸念点は以下の通りです。
- 女性ばかりの職場環境
- 保護者から偏見を持たれる
- 給与面での不安
デメリット①女性ばかりの職場環境
男性保育士の存在はまだ貴重なため、どの園でも基本的には女性に囲まれながら仕事をしていくことになります。
男性保育士が自分一人ということもよくあるため、段々と居心地の悪さを感じてしまうかもしれません。
同じ職場に異性がいることに慣れず攻撃的な態度を取る女性保育士も中にはいるかもしれません。
周りをよく見て一生懸命働いていれば、次第に同じ職場の仲間として受け入れてくれるでしょう。
多少の窮屈さを感じる職場もあるかもしれませんが、そういった新しい場所に飛び込むことで、男性保育士としてのロールモデルになれる可能性もあります。
デメリット②保護者から偏見を持たれる
女性保育士から見ると男性保育士は頼りにできる存在ですが、保護者からの男性への偏見が根強く残っていることもあります。
「女児の着替えやトイレのサポートを男性保育士に手伝わせないでほしい」と言う保護者も中にはいます。
普段から保護者と丁寧にコミュニケーションを取ることを心がけ、良好な関係を築いて警戒心を解くようにしましょう。
デメリット③給与面での不安
前述の通り働き方を工夫することで手当が付いたり昇給を狙える可能性はありますが、基本給が安いため将来への不安を覚える男性保育士も少なくありません。
基本給の低さが男性保育士が増えない要因となっていると考えられるでしょう。
ただし、これからも保育士の給料は見直され改善されていく見込みで、長く勤務し続けていけば年収アップは大いに期待できます。
男性保育士の将来性
残念ながら、現在はまだ保育士は給料の良い仕事ではありません。
男性保育士の数も年々増えてはいるものの、まだまだ女性の割合が多く、しばらくは女性の多い環境で勤務することになるでしょう。
男性保育士として働くことが不安な方のために、将来性について解説していきます。
男性保育士の将来は明るい
待機児童問題もあり、保育士自体が不足傾向にあるため、男女問わず保育士という存在はどこの保育園でも歓迎されると期待できます。
また、ジェンダーフリーや多様性が重要視される現代において、男性保育士の需要は非常に高まってきています。
給料面にまだ不安が残るかもしれませんが、将来的には今よりも更に給与面は改善される見込みのため、長く務めていけばその分高い給料も望める可能性が高いです。
専門性の高い保育士の資格を持っていれば保育園に限らず様々な職場で活かすことができますし、これからも男性保育士の将来性は広がっていくことでしょう。
男性保育士の年収・給料はいくら?|まとめ
男性保育士の平均年収は約389万円で、女性保育士に比べるとやや高いものの、全職種の中で見ると低いと言えます。
男女雇用機会均等法の改正をきっかけに男性の保育士が活躍する場面が増えてきましたが、全体的に見るとまだ保育現場では珍しいというのが現状です。
同世代の他業種で働く同性との給与格差や男女比のアンバランスさ、保護者による男性保育士への偏見など課題はありますが、教育現場において多様性を重視する上で女性だけでなく男性の存在は欠かせないものです。
また、キャリアアップ制度も毎年見直され、男性保育士ひとつとっても働き方の幅は広がっています。