法務教官は、非行少年・少女たちの更生や社会復帰をサポートする仕事です。
法務教官は、法務省専門教員と呼ばれており、少年院や少年鑑別所などで業務に従事しています。
そんな法務教官になりたい場合、試験の難易度が気になる方は多いのではないでしょうか。
今回は、法務教官になる方法や法務教官採用試験の受験資格・合格率(難易度)について詳しく解説します。
また、法務教官の具体的な仕事内容や、法務教官に向いている人の特徴なども紹介していますので、これから法務教官を目指す際の参考になれば幸いです。
- この記事でわかること
- 法務教官になる方法
- 法務教官採用試験の受験資格・試験内容
- 法務教官採用試験の合格率・難易度
- 法務教官の仕事内容・向いている人の特徴
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法務教官採用試験の難易度
法務教官は難易度も高く設定されています。
少年たちの心を癒して社会復帰を促す大切な仕事です。
法務教官資格の合格率は13~19%
合格率は13~19%ほどとなっています。
法務教官採用試験の概要
法務教官採用試験の概要を紹介します。
少年と向き合うための忍耐強さや粘り強さが必要となります。
法務教官の資格は「法務省」が運営管理を行っています。
法務省とは:
日本の行政機関のひとつです。明治2年に設立されました。
法務省専門職員(人間科学)採用試験の受験資格
法務教官になるために受験する必要がある法務省専門職員(人間科学)試験は、受験に際して学歴や性別などに制限はありません。
ただし、受験する年度の4月1日時点で21歳~28歳であることが条件です。
ただし、29歳~40歳の人でも社会人枠への応募であれば、中途採用で合格できる可能性があります。
法務教官採用試験の試験料
受験料は無料です。
法務教官採用試験の年間回数
毎年6月から試験が開始されるので、年に1回行われます。
法務教官採用試験の合格発表時期
合格発表は、8月下旬に発表されます。
法務教官の採用試験が難しいと言われる理由
法務教官の採用試験が難しいと言われる理由をチェックしましょう。
- デリケートな対応が求められる
- 筆記試験も重視される
- 試験範囲が広い
法務教官採用試験は、適性や人物像も重視されます。
筆記試験だけでなく面接試験の対策も並行して進めてください。
理由①デリケートな対応が求められる
法務教官の採用試験では、青少年への対応力が求められます。
デリケートな青少年に寄り添えるような対応が必要です。
面接試験は不確定な要素が多いため、とっさの対応力を育てましょう。
理由②筆記試験も重視される
法務教官の採用試験では、筆記試験も重視されます。
採用は成績順に決まるため、筆記試験の結果が不十分では法務教官にはなれません。
過去問やテキストなどを読み込み、試験に備えてください。
理由③試験範囲が広い
法務教官の採用試験は、学習する範囲が広いです。
採用試験のうち基礎能力試験は、一般知能と一般教養科目に分かれています。
一般知能では、現代文や英文、資料解釈などのスキルが求められます。
心理学などの知識を試される専門試験科目も力を入れておきたい試験範囲です。
法務教官採用試験を他試験とランキングで比較
法務教官採用試験と他試験を比べてみましょう。
区分 | 合格率 |
---|---|
法務教官 | 13~19% |
弁護士 | 41.50% |
警察官 | 16.50% |
税理士 | 18.40% |
弁理士 | 6.10% |
2023年の法務教官採用試験の倍率は2.8倍でした。
しかし、公務員採用試験の合格率と試験難易度は比例しません。
合格率が低いからといって易しい試験ではないので注意してください。
法務教官採用試験に合格するポイント
法務教官採用試験に合格するためには、以下に気を付けましょう。
- 専門知識を学んでおく
- 面接の練習をしておく
法務教官採用試験に合格するポイントごとに具体的な内容を解説します。
ポイント①専門知識を学んでおく
一次試験では以下の知識を、取りこぼしが無いよう学んでおく必要があります。
- 心理学
- 教育学
- 福祉など
試験では以上の専門知識について問われます。
試験範囲を広く深く勉強しましょう。
ポイント②面接の練習をしておく
面接の練習をしておくことも大切です。
面接の対策するべきところは、志望動機であるとされています。
ほかに、どういう仕事であるのかを理解しているかを問われることもあります。
法務教官採用試験の科目
法務教官採用試験の科目を確認しましょう。
試験は、一次試験と二次試験に分かれています。
一次試験
一次試験では基礎能力試験、専門試験の選択式、記述式の問題が出題されます。
合格基準は、選択式の問題で30%以上の正答率、記述式の問題で標準点を合憲した点に基づいて決定されます。
二次試験
二次試験では、面接と身体検査、身体測定で視力の検査が行われます。
二次試験の合格基準は、人柄や身体測定の結果をもとに最終的に判断されるようになっています。
法務教官になるには
法務教官になるには、どのような手順で試験を受ければ良いのかを事前に把握しておくことが大切です。
試験に合わせて対策を講じていなければ、採用試験の狭き門を突破することはできません。
まずは、法務教官になる方法や、採用までの流れについて解説します。
法務省専門職員(人間科学)試験に合格する
法務教官になるためには、まず法務省専門職員(人間科学)試験に合格する必要があります。
法務省専門職員には3つの区分があり、法務教官以外にも保護観察官や矯正心理専門職を志す人も受験する試験です。
法務教官の試験はA(男性枠)とB(女性枠)があり、Aの採用枠の方が多くなっています。
これは、女子少年院の数よりも少年院の数が多いことが理由です。そのため、基本的に少年院には男性法務教官、女子少年院には女性法務教官が配属される傾向にあります。
法務教官の管区面接に合格する
法務省専門職員(人間学科)試験に合格できても、そのまま法務教官の職に就けるわけではありません。
法務教官として働くには、法務省専門職員(人間学科)試験合格後に管轄地域ごとに実施されている管区面接を受ける必要があります。
面接では、知識を問われるよりも経験や志望動機など、人柄を判断する質問が多いのも特徴です。
法務教官の仕事内容
法務教官は心理系の国家公務員の1つで、非行に走った少年たちを再び社会復帰できるようにサポートするのが主な仕事です。
出所した少年が再び罪を犯すケースもあることから、法務教官がしっかりと少年らを教育・指導していくことが、ひいては社会全体の安定へとつながるため、その役割はたいへん重要なものです。
また、近年は少年犯罪の多様化・凶悪化が社会問題となっており、これらの問題の対策の1つとして、少年らをしっかり更生させることの重要性も認識されてきているところです。
法務教官の年収・給料相場
参考までに、東京都特別区での令和2年度の法務教官の初任給は、24万8,400円でした。
法務教官は国家公務員ですので、その給与については法律で規定されています。
公安職である法務教官の給与は、他の一般行政職に比べて12%ほど高い水準で支払われることとされており、公安職俸給表(二)が適用されます。
法務教官は、心理学・教育学・福祉・社会学など多様な専門性が求められる特殊な仕事であることから、給与の水準もやや高めに設定されているようです。
一般企業の大卒初任給と比較しても、やや高いと言えそうです。所定の給与の他にも、もちろん、残業した場合には超過勤務手当が付きますし、その他必要に応じて、扶養手当や通勤手当、期末手当・勤勉手当などが支払われることとされています。
なお、住宅については、勤務先の少年院や少年鑑別所の近隣の寮が貸与されます。
これらは無料で住むことができますので、家賃はかかりません。
民間企業に就職してアパート等を借りた場合、毎月数万円の家賃がかかることを考えると、法務教官の場合は手取りで自由に使えるお金が比較的多いと言えそうです。
もちろん、寮以外にもマンションなどを借りて住むこともできます。
その場合は限度額はあるものの、住宅手当が支給されますし、通勤にかかる費用も支給されます。
原則として定期昇給があり、その号俸等に応じて支払われる給与も増えていきます。
また、昇任も適宜行われ、専門官、統括専門官、主席専門官、施設長といったように、能力次第で昇任するコースもあります。専門官への昇任は、おおむね5年後のようです。
法務教官に向いている人
法務教官の主な仕事は、非行を犯した少年を社会復帰へと導くことです。
少年が罪を犯してしまった原因は、1つではありません。少年自身の問題をはじめ、親などの家庭環境の問題や学校の問題など、さまざまな事情が複雑に絡んでいます。
たとえば、少年自身の問題としては、少年が「これはやってはいけないことだ」と認識する能力が欠落してしまっている場合などが考えられます。
また、家庭環境の問題としては、親自身の規範意識が薄い場合や、子どものしつけを放棄してしまっている場合や、親と子どもの関係が崩壊してしまっている場合などがあり、このようなケースでは幼児期から社会のルールを守れない子どもになってしまうことがあります。
また学校などの教育現場になじめない子どもが非行に走ることもあります。これらの複雑な事情は個々の少年ごとに異なりますので、こういった事情を汲み取るために、少年とじっくり向き合うことが必要となります。
法務教官には、相手の立場に立って物事を考える力のある人が向いていると言えるでしょう。
また、少年は生身の人間ですから、何事も教官の思うようにはいかないことが多いものです。
いくらプログラムや授業を工夫したとしても、なかなか成果が得られなかったり、少年が心を開いてくれなかったりすることもあるでしょう。
また、表面的には良い子に見えても、ふとした拍子に裏切られることもあるかもしれません。
そんなときも、その少年を大きな心で受け止めてあげることが必要です。初めは心を頑なに閉ざしていた少年も、時間をかけて向き合うことで変わっていくものです。
ですから、その意味で法務教官には忍耐力や粘り強さが求められるといえるでしょう。
法務教官の将来性
少年による犯罪が多様化・凶悪化している社会情勢を受けて、少年法改正などの議論も盛んに叫ばれている昨今、少年犯罪を厳罰をもって抑止するという方向性とともに、非行少年の再犯率を押さえることも重要な課題となっています。
少年犯罪の件数自体は減少傾向にありますが、少年院を出所した少年の再犯率は低いとは言えず、これらの少年たちが真に社会復帰を果たすことが、ひいては少年犯罪の増加を食い止めることへもつながると考えられています。
こういった社会的な関心も高まっている昨今、法務教官の果たす社会的な役割も大きくなっていると言えます。
これからますます犯罪が多様化・低年齢化していく中で、いったんは脱線してしまった少年らをいかに社会復帰へと導いていくのか、難しい問題がある反面、法務教官への期待も高まっていくことでしょう。
このような意味で、法務教官の仕事は将来にわたってやりがいのあるものであると同時に、社会へ広く貢献することのできる職業であると言えるでしょう。
法務教官は青少年と向き合うプロ
犯罪は年々低年齢化してきている一方で、犯罪の具体的な内容も多様化してきているといわれています。
少年院や少年鑑別所に収容されている少年たちが犯した非行もさまざまで、万引きをしたり、暴走族と一緒に暴走行為をしたりするほか、覚せい剤やMDMAなどの薬物に手を出してしまうケースも増えてきています。
また、インターネットやスマートフォンの普及により、薬物事犯のほかに売春などの性非行の機会が増加傾向にあるともいわれており、少年犯罪はますます多様化してきています。
それにともない、少年たちが抱える心の闇も複雑化しており、彼らと向き合うために多様な経験を積んだ人材が法務教官として求められていると言えます。