弁護士になるには司法試験への合格が必須であり、司法試験の受験資格には「法科大学院を修了する」もしくは「予備試験に合格する」の2つのルートがあります。
司法試験予備試験は司法試験よりも難易度が高いとされており、合格率も例年おおよそ3~4%とかなり低めです。
しかし予備試験からの司法試験合格者は多く、法科大学院よりも費用や時間がかからないので社会人から目指すのにも最適でしょう。
そこで今回は、司法試験予備試験の合格率や合格者数などについて詳しく解説します。
司法試験予備試験の受験を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
この記事で分かること
- 予備試験の科目別合格率
- 予備試験と司法試験の合格率
- 予備試験の合格点
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司法試験予備試験とは
法曹三者(弁護士、検察官、裁判官)を志す場合、司法試験に合格しなければいけません。
司法試験には受験資格があり、以下の2つのうちどちらかを満たす必要があります。
- 司法試験予備試験に合格すること
- 法科大学院を修了するか、修了見込みである
司法試験予備試験は司法試験法第5条に基づき、「司法試験を受けようとする者が法科大学院を修了した者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定すること」を目的として実施されます。
予備試験ルートを選択することで法科大学院に進学せずに法曹三者を目指せ、合格後は次の年から5年間の間に司法試験を受験することができます。
司法試験予備試験の日程・科目について
予備試験 | |
---|---|
受験資格 | なし |
最終合格率 | 3~4% |
試験日程 | 7月:短答式試験(令和7年7月20日) 9月:論文式試験(令和7年9月6日・7日) 1月:口述式試験(令和8年1月24日・25日) |
試験場所 |
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試験科目 |
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試験時間 |
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短答式試験について
司法試験予備試験の短答式試験はマークシートに記入する形式であり、短答式試験の科目は憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、行政法、一般教養の8科目となります。
配点は一般教養が60点で、その他の科目(憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法)が各30点ずつ、合計270点満点で構成されています。
試験時間は、民法・商法・民事訴訟法が合わせて90分、憲法・行政法が合わせて60分、刑法・刑事訴訟法が合わせて60分、一般教養が90分です。
短答式試験の問題数は多いものの、試験時間が限られているので時間内に解ききる練習をするようにしましょう。
また、一般教養科目は人文科学から理系の知識まで多岐にわたる知識が問われ、高得点を取るのは難しいため、一般教養科目を計算に入れずできるだけ法律科目で高得点を取ることがカギです。
一般教養科目は平均点(例年24点~30点)前後を目指すのがベストでしょう。
論文式試験について
司法試験予備試験の論文式試験の科目は短答式試験よりも多く、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、法律実務基礎科目民事、法律実務基礎科目刑事、選択科目の合計10科目があります。
試験時間は憲法・行政法が合計140分、民法・商法・民事訴訟法が合計210分、刑法・刑事訴訟法が合計140分、法律実務基礎科目(民事・刑事)が合計180分、選択科目が70分で、配点は各50点の500点満点です。
論文式試験の問題形式は、長文の問題文を読み、1,500字程度(A4用紙4枚以内)の論述で回答するものとなっています。
予備試験の論文式試験は司法試験とは異なり、基礎知識が中心に問われるため、問題演習を繰り返すことが重要です。
またそれだけでなく、予備試験の過去問に対する答案作成を時間を計って何度も行うことも点数獲得につながります。
短答式試験を受験した後は毎日1通は実際に時間を計って起案することが理想でしょう。
口述試験について
司法試験予備試験の口述試験は法律実務基礎科目(民事)と法律実務基礎科目(刑事)の2科目で構成されており、具体的な試験時間は定められていません。
配点については基準点が60点とされ、57点から63点の範囲で採点されることが公表されています。
口述試験は短答式試験や論文式試験とは異なり、合格を前提とした試験であるため、対策を怠らなければ過度に心配する必要はありません。
実際に不合格となる人は全体の数%程度にとどまっています。
口述試験に必要な知識は論文式試験で学んだ内容で十分であり、法律実務基礎科目の内容を中心に論文式試験の際に学んだ民事・刑事の知識を確認すれば対策としては十分でしょう。
ただし口述試験は面接形式であるため、予備校などで行われる口述模試を受けることで口述試験の形式に慣れることも有効です。
予備試験・司法試験に年齢制限は無い?合格者の平均年齢や最年長・最年少は?
司法試験予備試験の合格率は約3~4%
試験年 | 短答 | 論文 | 口述 | 最終 |
---|---|---|---|---|
令和6(2024) | 21.86% | 17.45% | 97.40% | 3.57% |
令和5(2023) | 20.01% | 19.01% | 98.36% | 3.58% |
令和4(2022) | 21.75% | 17.85% | 98.13% | 3.63% |
令和3(2021) | 23.24% | 18.19% | 98.11% | 3.99% |
令和2(2020) | 23.84% | 19.02% | 95.67% | 4.17% |
令和元(2019) | 22.89% | 19.15% | 96.36% | 4.04% |
平成30(2018) | 23.90% | 17.99% | 94.96% | 3.89% |
平成29(2017) | 21.40% | 21.32% | 94.67% | 4.13% |
平成28(2016) | 23.23% | 18.44% | 94.41% | 3.88% |
平成27(2015) | 22.20% | 19.38% | 92.27% | 3.81% |
平成26(2014) | 19.50% | 20.49% | 91.05% | 3.44% |
平成25(2013) | 21.87% | 19.72% | 92.61% | 3.81% |
上記の表からも分かるように司法試験予備試験合格の最終合格率は、前述の通り例年約3~4%程度で推移しています。
短答の合格率は20%を少し超え、短答合格者の中での論文合格率も約20%程度です。
予備試験合格者の司法試験合格率が高い理由はいくつかあり、まずは予備試験の難易度が非常に高いことが挙げられます。
実際司法試験関連の試験の難易度は一般的に予備試験 > 司法試験 > 法科大学院入試(既修者)と位置付けられています。
また、予備試験の試験制度は司法試験と似た設計になっており、短答式・論文式の試験があり、論文式試験の採点が相対評価であることが共通しています。
つまり予備試験の延長線上に司法試験があるというイメージですね。
【2025年最新】予備試験の合格率は?合格者数・合格ラインの状況や大学別・社会人合格の割合を紹介
司法試験予備試験の大学別合格者数・合格率
順位 | 大学名 | 最終合格者(総数) | 合格率 |
---|---|---|---|
1 | 東京大学 | 97 | 11.81% |
2 | 慶應義塾大学 | 66 | 7.70% |
3 | 早稲田大学 | 54 | 6.40% |
4 | 京都大学 | 30 | 8.93% |
5 | 中央大学 | 26 | 2.78% |
6 | 一橋大学 | 20 | 10.00% |
7 | 大阪大学 | 14 | 8.28% |
8 | 神戸大学 | 9 | 6.57% |
9 | 同志社大学 | 7 | 2.87% |
10 | 東北大学 | 6 | 4.26% |
参照:【資料1-7】令和6年司法試験予備試験受験状況(大学別・全体)
予備試験ルートと法科大学院ルートの併願はできる?
予備試験と法科大学院ルートの併願は一般的に可能です。
予備試験は法科大学院修了レベルの力を測るため、法科大学院入試よりも難易度が高いことが挙げられます。
出題傾向も大学毎に異なりますが、司法試験を見据えた問題が出されます。
予備試験の法律科目対策は、そのまま法科大学院入試にも適用可能であり、両試験で共通の対策ができます。
予備試験で思うような結果が得られなかった場合は法科大学院に進学する、という進路が主流です。
司法試験・予備試験の通信講座・予備校おすすめランキング9選を徹底比較!
司法試験予備試験合格者が司法試験に合格する確率が高い理由
司法試験の合格率は、3〜4%と低いですが、予備試験に合格している人が司法試験に合格する確率は70〜90%以上と高いのが特徴です。
予備試験合格者が司法試験に合格する確率が高い理由について、以下で詳しく解説していきます。
理由①予備試験は難易度が高い
予備試験は年によって3〜4%の合格率を誇るかなり難易度の高い国家試験です。
一方実際の司法試験の合格率は40%となっており、合格者のほとんどが予備試験ルート出身者であるといわれています。
もともと法科大学院修了者と同等の学力を測るものでありながらも、合格すれば司法試験に合格するだけの実力があると判断できます。
理由②司法試験と予備試験は試験内容が似ている
司法試験と予備試験は試験制度や内容に共通性があり、予備試験の対策が司法試験にも通用します。
予備試験合格者は基礎力を徹底して磨いており、司法試験への切り替えもスムーズに行えるメリットがあります。
実際、短答式試験では共通問題が出題されることが多く、論文式試験の科目も共通しています。
2022年度の短答式試験の場合、予備試験の憲法が全12問・司法試験20問に対し、共通問題数は8問となっています。
ほかの民放・刑法についても10問程度は共通問題が出されているので、難易度は異なるが、予備試験合格者にとってはそのまま通用するケースが多いとわかります。
理由③予備試験対策で司法試験への基礎が固まる
予備試験合格者の司法試験合格率が高い理由の一つは、予備試験で基礎をしっかり固められることです。
予備試験では先にも野畑用に共通する部分が多く、法律基本7科目の短答式試験まで学習するため、幅広い基礎知識を身につけることができます。
一方、法科大学院ルートからの受験生は、授業の復習や課題に追われることが多く、試験対策に十分な時間を割けない場合があります。
授業の実施回数に制限があるため、授業以外にも自学自習が求められることもあります。
しかし上記のような状況だと司法試験に必要な基礎力を身につけることが難しく、合格率が低下する可能性があります。
したがって、予備試験合格者は司法試験に臨む際にも、しっかりと基礎力を持っており、試験に対する準備がより充実しています。
予備試験を通じて獲得した幅広い基礎知識が、司法試験での論文式試験においても活かされることが、合格率の向上につながっているのです。
法科大学院ルートでは経済的コストもかかるので、少しでも費用を抑えたい方は予備試験ルートがおすすめです。
司法試験・予備試験の受験にかかる費用は平均いくら?予備校講座の受講料金や学習費用・受験費用の内訳まで解説
予備試験ルートで司法試験を受験するメリット
予備試験ルートで司法試験を受援するメリットには以下のものが挙げられます。
メリット①司法試験の合格率が高い
予備試験合格者の最大のメリットは、その合格率が法科大学院ルートよりも高いことが挙げられます。
実際、予備試験ルートからの司法試験合格者は例年90%以上と言われれています。
最終的な目標は司法試験の合格となるので、どちらを選ぶのが正解というわけではありません。
ただし予備試験合格者には合格率の高さが示すように、司法試験に合格する能力が備わっているという信頼があります。
予備試験に合格するためには、効率的な学習計画を立ててコツコツと勉強を続ける必要がありますが、合格すれば司法試験への自信にもつながるでしょう。
メリット②経済的コストを抑えられる
予備試験ルートでは、法科大学院にかかる費用を大幅に節約することができます。
たとえば法科大学院に通う場合、入学金や年間の授業料、その他の設備費用などで、安いところでも120万円程度、高いところでは300万円以上もの費用がかかるといわれています。
さらに、法科大学院に通うための経済的負担に加えて、予備校に通う必要がある場合はさらなる費用が必要となります。
一方、予備試験ルートでは授業料も通学費もかからないため、法科大学院にかかる費用を大幅に節約することができます。
したがって予備試験ルートは経済的な負担を軽減しながら、勉強を進めることができます。
とくに社会人から司法試験にチャレンジする方や少しでも費用を抑えたいといった方は予備試験ルートがおすすめです。
理由③就職に有利になる
予備試験に合格すれば、以下の5大法律事務所のような大手の法律事務所に就職でも有利になるメリットがあります。
- 西村あさひ法律事務所
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所
- 長島・大野・常松法律事務所
- 森・濱田松本法律事務所
- (TMI総合法律事務所)
なぜなら大手の法律事務所では、予備試験合格者を優先的に採用する傾向がありるからです。
予備試験合格者は試験の難易度の高さより、司法試験合格前に厳しい競争を勝ち抜いてきた優秀な人材であるため、即戦力として期待されています。
また基礎力や応用力を身につけており、実務の世界で法曹としてリードする存在としても重宝される可能性が高いです。
一部の法律事務所では、法科大学院生が就職活動を始める前から予備試験合格者を対象としたインターンシップなどをおこなっているところもあり、「予備試験合格者」かどうかを条件としているところも。
予備試験ルートでは法科大学院生よりも早い段階から実務経験を積みながら、就職活動を行うことができるのでおすすめです。
司法試験予備試験合格に必要な勉強時間は2,000~5,000時間
一般的に司法試験予備試験に合格するために必要な勉強時間は2,000〜5,000時間とされています。
例えば、最短の2,000時間の勉強時間を確保する場合、1年で合格するためには1日あたり約6時間の勉強が必要です。
しかし、必ず合格するための勉強時間の基準があるわけではなく、2,000時間以上の勉強が必要な方ももちろんいます。
さらに、司法試験予備試験はとくに学習環境や過去の学習経験による個人差が大きいため、2〜3年以上かかる場合もあります。
勉強時間はあくまで基準であり、絶対的な数字ではないことを忘れないようにしましょう。
ある程度の勉強時間を確保することは当然ですが、量よりも質の高い勉強を心がけることが重要です。
司法試験と司法試験予備試験の違い
予備試験 | 司法試験 | |
---|---|---|
受験資格 | なし |
|
最終合格率 | 3~4% | 30~40% |
試験日程 | 7月:短答式試験(令和7年7月20日) 9月:論文式試験(令和7年9月6日・7日) 1月:口述式試験(令和8年1月24日・25日) | 例年7月に実施 1~3日目:論文式試験 5日目:短答式試験 |
試験場所 |
| 札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市、那覇市又はその周辺 |
試験科目 |
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試験時間 |
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受験料 | 17,500円 | 28,000円 |
司法試験予備試験の勉強のポイント
ここでは、司法試験予備試験の勉強のポイントについていくつかご紹介します。
➀短答式試験はインプットと過去問演習
短答式試験に合格しなければ論文式試験を受けることができないため、これは第一の関門としての役割を果たす試験です。
司法試験予備試験では主要な7科目に一般教養科目を加えた合計8科目が試験科目としてあります。
勉強方法としてはインプットを行いながら同時に過去問を解くことで理解度が深まります。
少なくとも過去10年分の問題を解くのがベストであり、知識をしっかりと定着させるように努めましょう。
またいわゆる短答プロパーと呼ばれる短答式試験にのみ出題される細かい周辺知識に過度に追従しないようにすることも大事です。
➁論文式試験は時間内に書ききる
論文試験は相対評価で採点されるため、得意な科目で高度な論文を書くのではなく、どの科目でも受験生全体の平均的なレベルの答案を時間内に作成しなければいけないので普段でも時間を意識することが大事です。
とくに昨今の新試験においては新しい論証が高い配点を持つ傾向があるため、これに対応するノウハウが予備試験の論文対策として有効だとされています。
また、時間内に合格レベルの答案を完成させるためには、長文の問題文を迅速に読み、論点を抽出する読解力も必要です。
ほかにも答案の文章は本人がうまく書けていると感じていても採点者から見ると論旨が不明瞭であったりするため第三者に添削してもらうこともおすすめです。
司法試験予備試験合格を目指すならアガルートアカデミー!
さて、これまで様々な観点から予備試験の合格率を見てきました。
予備試験合格者の多くは難関大学出身であることは紛れもない事実ですが、学歴や既に働いているからといって受験を諦める必要はありません。
これから予備試験合格を目指す方におすすめするのは、通信講座のアガルートアカデミーです。
最後に、アガルートの魅力をご紹介いたします。
【2024年】アガルートの司法試験・予備試験講座の口コミ・評判は?費用や合格率・受講生からの評価を解説
アガルートは合格率の高い通信講座
アガルートは通信講座であるため、いつでもどこでも学習できる点が魅力です。
既に働いている社会人や、日中は大学の講義で忙しい大学生も、日々のすきま時間や夜に自分のペースで学習ができます。
令和6年の司法試験は1,592名が最終合格を果たしましたが、なんとそのうち793名、37.8%はアガルートの受講生でした。
アガルートなら高い合格率と柔軟な学習方法で合格を目指すことができます!
予備試験の合格率・合格者数は低いが司法試験に受かりやすい
今回は予備試験の合格率を出身大学別・職業人別などさまざまな観点からご紹介しました。
予備試験合格者に大学生が多いこと、難関大学の出身が多いことは事実ですが、一方で社会人合格を果たす方もいます。
予備試験は学歴や職業に左右されず受験・合格を目指すことができる門戸の開かれた試験です。
予備試験への合格は例年4%とかなり低いものの、予備試験合格者の司法試験合格率は80%を下回ることがないなど、非常に高い水準です。
高い合格率の一因は、予備試験と司法試験の問題の共通性にあるといわれており、予備試験で身に付けた知識をそのまま活かせルメリットがあります。
実際、短答式試験では共通の問題が出題され、論文式試験では実務科目を除くすべての科目が共通しています。
予備試験対策のある通信講座やスクールも増えてきているのでぜひ今回の記事を参考にしてみてください。